八王子版 掲載号:2017年11月30日号
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羽生さんらの出発点に 横山町・八王子将棋クラブ

社会

「まち棋士」を見守り続けてきた八木下さん
「まち棋士」を見守り続けてきた八木下さん
 現在、史上初となる将棋の「永世7冠」を目指し、竜王戦に挑んでいる羽生善治さん(47)が小学生時代、腕を磨いた場所が市内にある。横山町の八王子将棋クラブだ(当時は東町)。先月、羽生さんを破り、王座に就いた中村太地さん(29)ら多くのプロ棋士たちの「出発点」にもなってきた。

 パチ、パチ、パチ――。50平方メートル程度の室内いっぱいに小学生から大人が集まり、無言で駒を指し合う。場所こそ、東町から横山町に移ったものの、1977年のオープン以来、八王子将棋クラブの変わらない光景だ。現在は週5日営業。子どもたちにとっては大人と対局し力試しできる貴重な場であり、大人たちには趣味を楽しめる息抜きのスポットとして多くの「まち棋士」を受け入れてきた。

 「山あり、谷ありで大変だったね」と店主の八木下征男さん(74)はこの40年間を振り返る。

「仕事に追われたくない」

 元々、電気設備関係の仕事に就いていた八木下さんが将棋クラブを立ち上げたのは「仕事に追われない」環境に身を置きたい、と考えたため。高度成長期のなか、仕事に忙殺される毎日を送っていたなかでの決断だった。「20歳過ぎまで将棋はルールを知っている程度だったんだけど、社内の大会で思わぬ好成績を収めたことからのめり込んでいったんだよ」。やればやるほど、結果がついてくる将棋の奥深さに惹かれたことが起業の後押しをした。

忘れられない出会い開業2年目に

 忘れられない出会いが開業2年目の夏。小中学生対象のトーナメント大会を企画したところ、母親と共に当時小学2年生だった羽生さんがクラブに来た。「お母さんに背中を押されて、という感じだったね。ほがらかでもの静かな子だったよ」。そこで飛車角と桂馬、香車の6駒無しで羽生少年と対戦したところ、八木下さんが勝利。ただ、次戦では接戦、3戦目で負けてしまった。敗戦の要因を徹底的に分析し改善策を立ててくる――。「飲み込みの早い子だったね。将棋の本も隅から隅まで読んできたようだった」と八木下さん。この一戦に勝てば級が上がるという試合に負けても、淡々と「次、勝てばいいんだよ」と話す羽生少年の姿に精神的な強さを感じたという。

 この出会いがクラブを日本一とも言えるほど有名な将棋道場に変えた。羽生さんが初めて7冠を獲得した96年から5年間ぐらいは、羽生さん「出身クラブ」として有名となり、毎日100人を超えるぐらいのお客さんが来るように。そのなかには羽生さんに憧れ、プロ棋士を目指す少年たちも含まれていた。「中村君が羽生君に憧れ、今では中村君を目指して当クラブに来る子も少なくない。羽生君から始まったこの好循環が、女流を含め10人を超えるプロが幼少期に当クラブを利用してくれていた理由になっていると思う」と八木下さんは考えている。

今は生きがいに

 「オープン当初はこんなにも有名なクラブになるとは、夢にも思わなかった。ゆっくり仕事をしていきたいと思っていたんだけど」。ただ、知名度が上がったとはいえ、一般の平日1日分の利用料金が800円である将棋クラブで生計を立てていくのは困難なことだという。「だから、私の跡を人にはお願いできないよ。今は生きがいとして運営している部分が大きい」。無理なくできる所まで。一緒にクラブを運営している妻のひろ子さんとそう決め、八木下さんは「まち棋士」たちを迎え続けていくつもりだ。

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