元プロ野球選手が都立片倉高等学校(片倉町)の野球部コーチを務めている。投手として、現・北海道日本ハムファイターズに所属していた舟山恭史さん(51)だ。昨年度、公民の教員として着任。高校生たちの指導に悪戦苦闘しながらも、「新鮮な毎日」を楽しんでいる。
立川市出身の舟山さんがファイターズから指名を受けたのは1989年。直球と緩いカーブを駆使して打者を翻弄する投手として期待され、2軍戦では個人賞を獲得するなど活躍。ただ、当時のチームは投手陣が充実していたこともあり、なかなか1軍で投げる機会に恵まれず、在籍7年間で1軍登板はわずか5イニングに終わるなど、力を発揮できないまま退団することに。
以後は保険会社などに勤務し、ビジネスマンとしての道を歩んできたのだという。
「もう一度」
そんな舟山さんに転機が訪れたのは40歳過ぎ。引退後、距離を置いてきた野球に再び向き合いたいという思いが芽生えてきたのだ。「もう一度、という思いでした。できれば職業として、と考えた結果が高校の教員だったんです」。そう決意した後は、都の教員採用試験の勉強など、先生になるための準備を重ね、私学での講師を経て、昨年度、片倉高校へ。「この1年間、慣れないことばかりで大変でしたが、新鮮な毎日で充実していました」と笑顔をみせる。
当初、戸惑い
「自由で伸びのび。楽しそうだな」――。それが同高校野球部に対する、舟山さんの第一印象だったという。昨年、日本高等学校野球連盟から育成功労賞を受けた、宮本秀樹監督(61)のもと、強豪私立校では「基本から外れる」とタブー視されることの多い、ジャンピングスローを練習で行う選手が頻繁にみられるなど、同部の自由な雰囲気に当初戸惑った、と話す舟山さん。「アットホームなチーム。いろいろな指導法があるんだなぁと驚いた部分もあります」
任されたのは投手コーチの役割。ピッチャーが行うベースカバーの方法など、就任後は細かな技術の指導にもあたってきたのだという。
”謙虚”に指導
心掛けているのは、選手との目線を合わせることだ。プロ野球選手だったから、と上からではなく、球児たちの声を聴くことを第一に、一人ひとりに合わせた指導を行っている。
だからこそ、その指導法は”謙虚”。考えを押しつけるのではなく、根拠を示したうえで、「このようにしてみたら」と投げかけるのが舟山スタイル。それは、普段の授業でも同じで、生徒たちに「自ら考える癖」を身につけてもらいたいという思いがあるのだという。
「自分で見つけたやり方で結果が出ると楽しいじゃないですか。そのことを生徒たちに伝えていきたいんです」
それは自身が築いてきた「成功の法則」でもある。自身の選手時代、向上心をもって考え、改善を繰り返すことで力をつけていったという思いがあるのだ。「だから、結果を残すことはできなかったですが、プロ野球選手時代は本当に楽しい日々でした」
あと2、3人
同部は先月まで行われた春の東京都大会ではベスト16と健闘。八王子市内の高校では最上位の結果だった。
そんなチームで舟山さんは夏の大会までに、あと2、3人戦力となる投手を育てたいと話す。それができれば面白い結果になる可能性があると微笑み、「一戦一戦、大切に戦っていくだけです。私自身も楽しんでいきたいと思います」と意気込みを語る。
宮本監督は「私とは異なる考えをもっていて、舟山さんと野球に関するディスカッションをするのが本当に楽しい。多くを学ぶことができるんです」と話している。
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