「利用者さんは、なかなか外に出る機会は少ないですが同じ地域で暮らしている」。市内で重症心身障害者の通所事業を行う島田療育センターはちおうじ(台町/小児障害メディカルセンター内)の大谷聖信(きよのぶ)さんはそう話す。重症心身障害者とは、重度の肢体不自由と重度の知的障害とが重複した状態の人。施設では積極的に取り組む学校や町会といった「地域」との交流が、その理解の促進につながればと願っている。
重症心身障害児者 「もっと知って」
「子ども神輿が施設に入って、利用者さんと町内の子どもたちで一緒に太鼓を叩いてもらったこともあります。スタッフの方にはいつも祭りを手伝っていただき感謝しています」と、先月あった夏祭りを終えた台町4丁目町会の石坂俊雄町会長は喜ぶ。
市内にはおよそ100人の重症心身障害児者が暮らすと言われている。専門家による分類では、IQ35以下で「座れる(歩くことができない)」あるいは「寝たきり」。「生活するのに医療的なケアを必要としている人たちです。口から食べるのが難しく、鼻や胃、腸から経腸栄養剤を使う人も多いです」。大谷さんは施設で重症心身障害者を担当する通所部門の責任者だ。
施設の開設は2011年。現在同部門は看護師、介護福祉士ら17人のスタッフがおり、1日最大25人の利用者の対応にあたっている。利用者の年齢は18歳から45歳。バスで訪れレクリエーション、リハビリ、食事、そして入浴などをする。
認知度に悩み
大谷さんは大学時代、介護について学ぶ中で、初めて重症心身障害者と触れ合った。「働きかけると言葉にできなくても笑顔で返してくれる」。そんな純粋さに引かれた。以来20年ほど、彼らのケアに力を注ぐ。「この仕事は日々発見がある。共生社会がもっと進めばいいですね」と願う。
一方で「認知度の低さ」に頭を抱えている。
大谷さんは小学生の話にショックを受けたことがある。「障害が『うつる』と思っている児童がいるんです。『知らない』ことは恐怖につながってしまうんですね」。実際、大谷さんが重症心身障害者について知ったのも学生時代の実習が最初だった。「教科書にもなかなか出てこない。障害にかかわっていても意外と学ぶ機会が少なかった」と当時を振り返る。「今は利用者さんから大切なことを教わっている気がします」
「毎日楽しく過ごして」
そんな中、施設では地域との交流が深まりつつある。
毎年近隣の小学校から5年生が総合学習の一環で施設を訪れている。中学生による職場体験の場としても利用されるようになった。また地元町会とは夏祭りを通じてつながりが育まれている。「利用者さんは、なかなか外に出る機会は少ないですが同じ地域で暮らしていることを知ってほしい。手を取り合っていければ」と大谷さんはさらなる共生社会の形成に期待する。
スタッフの1人は「言葉で思いや気持ちを伝える事は困難ですが、目や口の動き、表情でコミュニケーションをとっています。私達はその気持ちを汲み取り代弁し、共感しています。『毎日楽しく過ごして下さるようになる』。私たち支援者の思いです」と話した。
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