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「日々の生活にSDGsを」 小泉大臣インタビュー(前編)

社会

掲載号:2021年6月17日号

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取材に答える小泉環境大臣
取材に答える小泉環境大臣

 世界が直面する問題を解決するための「SDGs」。本紙では環境問題をはじめ、SDGs達成に向けた課題を小泉進次郎環境大臣に聞いた。Web限定記事では、インタビューの全容をお届けする。※括弧内は注釈

―・―・―・―・―・―

 ―SDGsに対する取り組みが始まって6年目。日本の現状は。

 「17のゴールがある中で、達成状況はそれぞれによって濃淡があるのが現実。例えばジェンダーの分野では、日本のランキング(ジェンダー・ギャップ指数)は世界の中でも本当に低い。その大きな要素の一つは、政治の世界での女性進出率が非常に低い。民間企業でも役員以上を指す『指導層』でも少ない。日本が追いついていない部分です」

 ―日本がリードする分野もあるのでしょうか。

 「日本の自治体における環境への取り組みは世界の中でも注目を浴びていて、横浜市は約60校の小中学校へ太陽光パネルの設置を進めています。これは世界的に見ても珍しい取り組み。また横浜市と秋田県では『太陽光エネルギー』の広域連携を行っています。例えば、横浜市のある珈琲所コメダ珈琲では、秋田県の再生可能エネルギーを使っている。再エネ100%コーヒーです。菅総理の出身地・秋田県と選挙区である横浜市での連携は、偶然ですが面白いですよね。4月にバイデン大統領と菅総理が結んだ『日米気候変動パートナーシップ』と、先日行われたG7での会合(『G7気候・環境大臣会合』)での成果文書の中にも自治体の取り組みを政府が後押しする旨を入れている。自治体の取り組みは日本が世界でリーダーシップを取れる分野だと思います。自治体の動きを後押ししていきたい」

 ―神奈川・東京多摩エリアのポテンシャルは。

 「神奈川・東京多摩エリアは都市部と農山漁村部が入り交じった地域性。都市部では建物の屋上、農山漁村部では耕作放棄地を利用して太陽光発電を行うなど場所を活用すれば、地方や農村部で作った電力を都市部が消費するという現在のスタイルから持続可能な構造に変えられるのでは。屋根置きの太陽光パネルのビジネスモデルとして設置無料型のものが出ています。また、農業をやりながら同じ土地で太陽光パネルを使う『ソーラーシェアリング』も出てきている。導入しやすい取り組みが進んでいるので、個人の自宅や企業、大型スーパーなどでも活用していただきたいです」

 ―持続可能性を考えたとき、これからの都市の在り方とは。

 「今から10年前に東日本大震災で原発事故がありました。そのときに『都市部の生活は福島県で作られた電力によって賄われている』ということに多くの人が気付きましたよね。電力を消費するだけでなく、消費する電力の内容について意識を持つことも必要だと思います。そのための政策の一つとして電気自動車の普及の後押しにも力を入れています。電気自動車は『動く蓄電池』。電気自動車が使わない分の電力を施設などで給電する。日産自動車では、みなとみらいの『ニッサン パビリオン』で、電気自動車で来た人がパビリオンのカフェに給電すると、カフェでドリンクをサービスしてもらえる取り組みをやっていました。『物々交換』ならぬ『電物交換』。都市も、エネルギーを消費するだけでなく、こういう新たなライフスタイルの時代を作っていかなければなりません。環境省も電気自動車導入で1台あたり最大80万円の補助金を出す事業を行っています」

 ―理解度、浸透度はどうでしょうか。

 「まず、SDGsバッジをこんなに付けている国はないです。ただ、それが本当のライフスタイルとして落とし込めていない。SDGsに賛同している企業は増えてきましたが、社員一人ひとりがどのような思いを持って取り組んでいるかは別物。ただ最近は、テレビでもSDGsを特集する番組を継続的にやっていますね。さらに、教育現場では学習指導要領が改定され、教育の現場でもSDGsが積極的に取り入れられるようになりました。学校でSDGsを学んだ子どもから親への会話が生まれつつある。これはすごくいいことですよね」

―SDGs達成へ取り組んでいる中小企業はまだまだ少ない。まず取り組めることは。

 「まず電力契約を見直してほしい。再生可能エネルギーに切り替えてもコストはそんなに変わらない場合もあります。そしてもう一つは『脱プラスチック』。この動きをできる範囲でいいので考えていただきたい。そして改めて大切なのが『省エネ』。日本がこれまでも頑張ってきた分野です。例えばLEDは白熱電球よりコストが5倍から10倍違うが、使用期限の点では40倍以上長持ちします。家計にもやさしく環境にもやさしい。そういった積み重ねも決して軽視できない」 

脱プラで

環境負荷を軽減

 ―SDGsには環境に関する項目が13個あり、特に重点が置かれている分野です。市民に関わる施策について教えてください。

 「分かりやすい最近の変化は、昨年から始まったレジ袋の有料化。これは賛否がありました。そして今年6月4日には『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律』(プラスチック新法)が成立しました。この新法の議論の過程では、使い捨てスプーン有料化に対し賛否もありました。まず、なぜプラスチックを減らそうとしているかということから、もう一度説明をしないといけないと思っています。プラスチックは便利でコストが安く、加工しやすいなど便利な素材ですが、残念ながら海の汚染につながっている。このままだと海の魚よりもプラスチックごみの方が多くなりかねない。それが生物多様性の危機につながったり、プラスチックを食べた海の生物を人間が食べることによる健康への影響も、今はまだわからないが心配されています。さらに日本はこれまで家庭から出るプラスチックごみを中国を含む海外に輸出していましたが、2017年から段階的に中国が海外からのごみを規制。これを機に、日本は国内の中でプラスチックごみを循環させる体制を作っていかなければならない。使い捨てのプラスチックは極力やめる。必要な場合も、再生プラスチックを100%使うか代替素材を選ぶ。

 環境を犠牲にしない形への変化が急速になってきました。最近の分かりやすい例だと、無印良品がペットボトルからアルミ缶に切り替える動きを見せたり、ラベルレスペットボトルのようなリサイクルを前提としたデザインも出てきました。ぜひ皆さんにも、脱プラ・脱炭素を生活の中に取り入れてもらいたい」

 ―私たちが具体的にできることは。

 「例えばマイボトルやマイバッグを使うとか、家の電力を再生可能エネルギーに切り替えるなど。あとは地産地消。今はネットがありますから、どこからでも美味しいものが取り寄せられるが、地域にも魅力的な食材がたくさんある。輸送のエネルギーを削減するためにも地元で消費するということを根付かせたい。私も横須賀市や三浦市の農家の皆さんから野菜指定でなく獲れたものの詰め合わせセットを段ボールで注文することもあります。無駄になる食材、廃棄が減る。これもすごく大事なこと」

 ―SDGs達成のために個人的に取り組んでいることは。

 「マイバッグ、マイボトルはもちろん、家で炭酸水を作る機械を買ったり、水道に浄水器を取り付けるなどしてペットボトルの削減に取り組んでいます。コンポスト(生ゴミから堆肥をつくる容器)も使っています。相当ごみが減りましたね。あとは、できる限りプラスチックを減らすために、食品用ラップフィルムから、何度でも洗って使える蜜蝋ラップなどに切り替えました。環境大臣だからやっているのではなく、一つ変えてみたら自分がいかに環境負荷が高い生活をしていたか気付かされるんですよ。それで、一つひとつ変えていくことが自分の中で楽しみに変わった。一つ変えるとまた次も変えたくなる。だからまず一つ変えてみてください」

 ―SDGsにおける日本と世界のつながりは。

 「日本は自国の力だけで生きている国ではありません。食料、エネルギー、経済、全て世界とつながっています。どこかの国で起きていることが他人事ではなくて日本の課題でもあるということを分かってほしい。地域ニュースに加えて国際的なニュースにも目を向けて『世の中には何が起こっているんだろう』ということに関心を向けてもらえれば、SDGsの中の壮大な目標でもある飢餓や貧困をなくそう、そして再生可能エネルギーを導入しようなどという動きが、なぜ急速に広がってきたかを感じていただけると思います。私が最近よく話をするのは『食品ロス』のこと。実は、ノーベル平和賞をとったWFP(国際連合世界食糧計画)が、世界中に支援している食糧の総量の1・5倍を日本は捨てているんです。日本が捨てなければWFPはいらないんですよ。だけど我々は、それだけの量を輸入して生活をしている。是非少しでも無駄な廃棄を減らす取り組みをしていただきたい。スーパーに行ったときに、賞味期限の1日2日の違いで後ろの商品をとるのをやめるとか。また、賞味期限が何月何日までかはそんなに気にする必要はありません。だから色んな働きかけをして缶詰のような長期保存ができるタイプの食糧では『何年何月何日』という表示がなくなってきて、『何年何月』までになっています。これも食品ロスの抑制につながっています」

 ―環境以外の分野で気になることは。

 「自分の中でやはり一番、環境に焦点が当たっていますが、全ての人が働きやすい社会に舵を切るタイミングだと思っています。昨年は大臣として初めて育休を取り、コロナ下ではリモートワークやデジタル化を推進しました。環境省はリモートワークやデジタル化が霞が関で進んでいる省庁として民間の調査で1位にもなりました。『全ての人が働きやすい社会に』ということが大事です。先日体調を崩して手術をしたのですが、デジタル化を進めることとリモートワークの環境を整備するということは、病と闘いながらも仕事をしている人にもプラスになると改めて感じました。そこで大切なのは『リモートワークをしなければいけない』ではなく、『リモートワークも選択できる』ということ。どうしても対面で働く必要がある職種もあるが、リモートでも支障なく仕事ができるケースもあるのに固定観念に縛られて『対面じゃなきゃダメだ』という精神論でリモートワークがさせてもらえないという人たちがいるなら、それは変えなければいけない。結果、健康を害してしまったり働き方改革が進まない原因にもつながる。私自ら身をもって世の中を変える後押しができればと思います」

 ―最後に読者へメッセージをお願いします。

 「日々の生活の中で、まず一つ環境に配慮した行動を起こしてみる。きょうから何か一つ、始めてみてください」

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