父親が漁師
中町の飲食店に勤務する大石龍也さん(41)は東日本大震災で大きな被害を受けた岩手県下閉伊郡山田町の出身だ。
震災当時、大石さんは八王子市内の別の店舗で厨房に立っていた。父親の秀男さんは漁師。実家は海から数メートルのところにある。震災の知らせを聞き「母親、妹たちは無事だろうが、父親は無理だろう」と思った。
秀男さんについてそう考えたのは、地元消防団の団長だったからだ。津波が来たら、周りを避難させる任務に当たったはず。大石さんは2、3時間に1回、インターネットで、常時更新されていく行方不明者の情報を確認していた。
連絡が取れたのはその3日後。大石さんの携帯電話に衛星電話の着信があった。30秒という限られた時間の中で、自衛隊を通じて本人と話ができた。家族ともども無事で胸を撫で下ろした。
大石さんの勤め先の会社は被災地にも店があり、会社のトラックは緊急車両の認定を受け、現地へ支援物資を運ぶことができた。大石さんは上司に頼み、秀男さんらがいる避難所へ直接、必要なものを届けてもらった。ただ、秀男さんからは「こっちへは戻ってくるな」と何度も言われた。
ほとんど職失う
それは、変わり果てた街並みを見せたくなかったからのようだ。海のそばだった実家はもちろん流された。山田町は水産業が盛んで、町民2万5000人のうち、およそ6割がその業務に従事していた。それが、津波でほとんどの人が職を失った。「家より、仕事がなくなったことの方が辛い」。大石さんはそんな声を何度も聞いた。
あす11日で東日本大震災から11年。ホタテ、生ガキ、アワビ…。大石さんは山田町の水産物を購入してもらうことが、現地の復興につながると訴える。消費が促進し出荷が増えれば、地元経済は潤いを取り戻せる。「7回忌が終わったら落ち着きました。岩手の人は前を向いてきています。現地のものを見つけたら、思い出して買って欲しいですね」。上質な水産物は大石さんのお店で食べることもできる。
![]() 【左】大石さんの父で漁師の秀男さん/【右】山田町のカキ=いずれも大石さん提供
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