卒寿を記念し、処女作品集「ペンのしずく」を発表した 小方 末(すえ)子さん 南区文京在住 90歳
“詩を糧に” 歩み続けた90年
○…「自分の心が書いているものの中に のめり込んでしまう ペンの走るまま 書き続ける エネルギーが欲しい」。これは『まどろみ』という作品の一部。別の作品には「芯が短くなった 早く書かないと みんな忘れてしまう 急いで削る」(『鉛筆』)とも。「思ったことを知っている限りの言葉で書いているだけ」と穏やかに微笑む。「思い出したりしたときにすぐその場で」記すことが習慣。しかしどれも原稿用紙に書く前に推敲を重ね、生まれたもの。時には、眠る時も枕元にペンとメモ用紙を置いていた。
○…卒寿記念となった処女詩集には「昔から好きだった」というハンカチをモチーフに乙女心を感じさせる空想の情景や、夏の甲子園を“ボールの気持ち”で元気いっぱいユーモラスに表現する作品も。市文化祭での受賞作も並ぶ。ところどころに「子どもの手が離れたころ、近所のお友達に誘われて習っていたのよ」という自作の俳画を添えた。「俳句も習っていたの」。だが、詩は、小学校時代から、だれに教わるでもなく、綴っていた。
○…現在の町田市木曽町出身。「綴り方は、よくほめられていた。先生が本を読んでくださったのが一番の思い出」。姉が購読していた『少女倶楽部』や『少女の友』といった雑誌に親しんだ。詩集には、生まれ育った境川の情景や兄弟との思い出、青春時代の戦争の記憶、嫁ぎ先の農家を手伝った結婚生活や子育ての様子も作品に。その多忙な暮らしの傍ら、「書いていると前向きになる」と習慣は続いた。
○…現在は、80代で入会したサークル「相模原詩人クラブ」最高齢の会員として、月1度の合評会に備える日々だ。作品集発表も会が縁で実現した。「私、昔から、どこへいっても良い人に巡り合うのよ」。詩の心は「いまだにつかめない。だから続くんでしょうね。身体が続く限りやっていきたい」と更に創作意欲は増している。
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