男女ともにインターハイ出場へ導いた 井上 康輔さん 麻溝台高等学校山岳部顧問 55歳
山こそ理科の教科書
○…北岳に登らなければ「キタダケソウ」には巡り会えない。山肌に転がる石を見て何千万年前の化石だと気付く。真夜中に広がる空一面の光を結び、星座を浮かべる。知らなければ通り過ぎてしまう数々の自然との出会いに、驚嘆し生徒と喜びあう。山岳部を男女揃って全国の舞台に押し上げたのは、山の醍醐味を知り尽くした”理科の先生”だ。
○…「天気図を教えられること」が自身の大きな強み。登山経験も豊富ながら、気象予報士の専門資格まで持つ。物理の教員であることを最大限生かし、部活では基礎体力作りはもちろん山の”知識”も教え込んでいく。「山の大会は、ただ登って下りるだけではない。天気図を書いたり、自分がいる位置を正確に記入したり。そのほか自然にまつわる問題など筆記を含めた総合点で評価されます」。おかげで出場メンバーは、天気図を書かせたら神奈川県でもトップレベルだという。
○…ユーミンの歌にもなった1972年10月9日のジャコビニ彗星。高1当時、体育祭が終わった後、地学部の仲間と望遠鏡を担いで丹沢に登った。「天気が悪くて星はほとんど見えなかったんだよね」。これが最初の山との出会い。幼いころから理科が好きだった少年は大学卒業後、教員となり、縁あって山岳部の顧問に。以後27年、ほぼ毎月山に登り続けている。現在は県高等学校体育連盟・登山専門部の委員長となり、2年後県内で行われるインターハイの準備に追われている。
○…昔は、妻と子ども3人を連れて全国各地の山へ出掛けた。「今はもうみんなさっぱりで」。妻とはもっぱら”観光”旅行。子どもたちが大きくなった今、昔の仲間と海外登山も目論む。「下では何も見えなかったのに、景色が一面に広がってくる。何回登っても感動するよね。山はいいぞ〜」。大会のご褒美に、部員たちを富士山へ。日本一の山で、新たな自然(理科の楽しさ)との出会いが待っている。
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