第66回「毎日書道展」で会員賞を受賞した 金野(こんの)美和子(みわこ)さん 中央区在住 52歳
生みの苦しみも明日への糧
○…『石(いし)の間(ま)に 砂(すな)を揺(ゆ)(ゆ)るがし 湧(わ)く水(みず)の 清(すが)しきかなや 我(われ)はみ(見)つるに』。毎日展が開催される夏をイメージし、斎藤茂吉の「涼しげな」短歌をかなでしたためた。作品名は『水』。「大変なことになった」。受賞の報せを聞いた最初の感想だ。23度目の出品での朗報。今でも師の教えを受ける身ではありながら、一方で「自分で考え、作品を創作していく立場」となった。
〇…東京都千代田区生まれ。筆を持ったのは小学生の頃だが、書道教室に通う母に連れられ、幼少時には書にふれる環境にいた。20代後半、とある展覧会で出会った作品に衝撃を受けた。「ダイナミックで大らか、それでいて魅力的。自分もこんな字が書いてみたい」。改めて書を学ぶため、つてをたどって師事したのが山崎(やまざき)暁子(きょうこ)さん。偶然にも、その衝撃の作品の主であった。
〇…書は「元気の源」だ。元々あまり体力があるほうではないが、書に関わることにはアクティブになれる。書は心を鎮めるだけでなく、気持ちを高ぶらせてくれる。だが時には上手く書けないことや、あまりにも書きすぎて飽きてしまうこともある。そんな時は紙を、筆を、題材を変える。それでも駄目なら、「今日の苦しみが糧となって、明日は上手に書けるかもしれない」と、日を変える。「そうは言っても、次の日にうまく書けたことはないですけど」と苦笑するも、「そう思わないと続かないかな」と生みの苦しみを、新たな活力にする。
〇…夫や友人との旅行が息抜き。四季折々の景色を愛で、行く先々で美術館を訪ね、旅先でも常に感性を養う。「書だけ書いていても上手にならないわよ」とは、胸に刻む師の教え。絵画や音楽鑑賞、旅行など心の栄養がよい書を生むのだという。60歳でも「ひよっこ」と言われる書道界。「私なんてまだ殻が割れたばかり」。「会員賞がゴールではなく、ここから新しい修業が始まるものと思っております」と、凜として語った。
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