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障害者殺傷 どう向き合う 市内福祉関係者に聞く

社会

公開:2016年8月4日

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事件が起きた「津久井やまゆり園」
事件が起きた「津久井やまゆり園」

 7月26日未明に緑区千木良(ちぎら)の障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた、入居者19人が死亡し25人以上の負傷者を出した殺傷事件。障害者が標的にされたこと、容疑者が元施設職員だったことを受け、本紙では市内の障害者支援団体や福祉施設、有識者に「事件をどう感じるか」「今できること、必要なことはなにか」を聞いた。(取材は8月1日時点)

命と人権を尊重して

 社会福祉法人相模原市社会福祉協議会の戸塚英明会長は本紙の質問に対し、以下の通り書面で回答した。

 「『障がいは、決して特別なことではない』、『たとえ障がいがあっても、その障がいのままに受け入れる社会をつくる』。長い時間と多くの方々が、そのような社会の実現に向けて、取組を積み重ねてこられました。今回の事件によって皆様方のご努力が後戻りすることのないことを、まずは切に願うものです。私ども社会福祉協議会は、地域福祉を推進する団体として、日頃から障がいのある方々への理解や、施設と地域の方々との交流を進めてまいりましたが、今回の事件を機に、あらためて障がいのある、なしに関わらず一人ひとりの命と人権が尊重される地域づくりに向けてなお一層努力することを、犠牲となられた方々、ご遺族の方々にお誓い申し上げるとともに、心より哀悼の意を表し、負傷された方々には、一日も早いご回復をお祈り申し上げる次第です」

社会的弱者守る強化を

 市内で様々な障害者や高齢者、子どもたちの施設を運営する社会福祉法人相模福祉村の赤間源太郎理事長は「今回の事件で、様々な課題が浮き彫りになった。とにかく、当施設では社会的弱者を守る上での強化を図っていく。スタッフには、緊急時は『消防ボタンを押せ』と話している」

 「一方で、福祉施設は地域開放、地域に向けて広げていたのに、その流れに逆行してしまったり、閉鎖的になってしまうと利用者たちの暮らし方が制約されてしまうのではないか。そして、今回の一つの行動で、福祉現場が『殺伐としている』『やりがいの無い仕事』などとマイナスイメージに捉われないか、それらを危惧している。同じ立場として(事件が)落ち着いたところで福祉村としても支援を考えたい。ただ、当事者を考えると今はどうこう言えない。冷静に見守ることが大事なのではないか」と語る。

今まで以上に活発に

 身体や視覚、聴覚に障害を抱える約250人が所属する相模原市身体障害者連合会の小出庄作会長は「障害者だけを襲った今回の凄惨な事件を受け、やりきれない思いを抱え、落ち込んでいる会員は多い。身体障害者の中には外出するのが難しい人もいるので、一人でふさぎ込んでしまわないように気になる会員には電話で声掛けをしている。会員同士が、できるだけ顔を合わせて、どんなことでもいいので話をできるように行事などを今までと同じように、またはそれ以上に活発に行っていきたい」

不安・孤独支え合う

 中央区共和で障害者の生活介護支援事業を行う「NPO法人きこり」の職員、河内悠史さんは「今後二度とこういった事件が起きてはいけない。ただの障害者差別の問題だけではない複雑な事件。仕事や社会での不安、孤独が犯罪の背景にあるのではないか。福祉の分野に限らず、誰もが持つ社会での悩みを容疑者には吐き出す場所がなかったのでは、と考える」と話す。

 続けて「障害者福祉の現場で働く一個人としては、その様な矛盾や悩みを職員同士が共有して支え合っていくことが大切かと思う。また、障害のある方のことを地域の人がより自然に知ることができ、見守れるような社会の在り方について模索していくことが必要」と語った。

「勇気を持って相談を」

 発達障害の子を持つ親への子育て支援を行う「子育ておしゃべり会ネバーランド」の岡崎京子代表は「背景が明確になっていない状況で、(容疑者が)どう育ったのか、親が様子をわかっていたのかどうかも気になるところだが、自分の活動の面から言えるのはお母さんが孤立しないこと。他の子と違うと感じることをスッと話せる場をつくることが大事」と話す。

 さらに「(容疑者宅の地域が)狭い地域で、親も大変だったかも知れないが、何かシグナルがあったはず。薬物に走らざるを得ない、何かがあったのではないかとも思う。だから大事に至る前に(親が)相談できる場に足を運ぶこと。そうすれば繋がりができていく。わが子を普通の子と思い込まず、悩んだら『うちの子は大丈夫なのか』と勇気を持って声を上げてほしい。

 そうした場をつくり続けることが私のできることであり、しっかり声を上げていくことは(子育て中の)皆さんにとって必要なことだと思う」

今まで通り、自信を持って

 障害者の就労支援としてガーデニング事業を行う就労継続支援B型事業所「レインツリー」を運営する(株)ナチュラルライフサポートの古里靖代表は「障害者の方たちはスタッフと共同で庭仕事をしているので、依頼者や関わりのある人たちにとっても少なからず影響は出てくると思う」

 「私たちにできることは、(事件を受けて)事は重大でも特に何か変わったことをするのでなく、これまで通り、やってきたことを淡々と、粛々と、自信を持ってやっていくことだと思う。私たちは支援者として、バタバタせず、何も変わらず、今まで通りに『大丈夫だよ』と声をかけながら(障害がある)メンバーたちに接していきたい」と話した。

障害者支援のあり方考えたい

 社会福祉学を専門とし、相模原市障害者施策推進協議会では会長を務める和泉短期大学の鈴木敏彦教授は「今回の事件は本当に特異なケースで、予測は難しく、施設の体制が悪かったという訳ではないと思う。

 4月に法律(障害者差別解消法)が制定されたが、障害者への差別が少なからずあると感じるので、そうした差別・偏見などに向き合うことが大事だと考える。障害者の方と共に生きていくという認識や、関心をもって声を掛けていくことを大切にし、もっと障害者支援のあり方について考えられれば」
 

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