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最期まで漫画一筋に 市村章さん 81年人生に幕

社会

公開:2015年11月5日

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自ら制作したロゴを手にする市村章さん(13年8月撮影)
自ら制作したロゴを手にする市村章さん(13年8月撮影)

 地元相模台在住の漫画家・市村章さんが10月22日、市内の病院で亡くなった。享年81。漫画家として長年活躍していたほか、地元での作品展開催、地域の散策マップや施設のロゴマーク制作などその活躍は多岐にわたり、”地域の顔”として広く親しまれていた。

 親族によると市村さんは9月初旬、体調不良から検査入院し、最期は肺炎を併発して息を引き取ったという。葬儀は24日、自宅で親族によりしめやかに行われた。

 市村さんは1934年、長野県須坂市の生まれ。高校卒業を機に上京し、多摩美術大学油絵科へ進学。日活撮影所美術部に入社したのち、縁あって漫画の世界へ。相模台に住み始めたのは1970年頃。制作活動の傍ら、PTAや自治会など地域活動にも尽力していた。近年では、小田急相模原駅前の商業施設の開業時にそのロゴマークを制作、今年1月に発行された地元相模台地区の散策マップではイラストを担当。様々な制作物を依頼されては務めあげ、年を重ねなお活躍の幅を広げてきた。

「脱出するぞ」病床で制作続け

 市村さんは来年早々、桜台小学校(南区相模台)に併設されている「桜台美術館」で作画個展を控えており、制作は佳境を迎えていた。入院している間も原画制作に励み、病床にはクレヨンが散らばることもしばしば。奥さんの充子(みちこ)さんは、「本当に元気でした。(制作が忙しいので)早くここから脱出するぞって。先生に怒られるからおとなしくしていてよ、といさめていたくらい」と振り返る。『線路は続くよどこまでも』と題した汽車がテーマの作品展。市村さんは、「部屋いっぱいに汽車を走らせるんだ。線路は人間関係と同じ。繋がっていく」と話していたという。

漫画愛、地域愛溢れ

 市村さんは1984年2月から『週刊東洋経済』(東洋経済新報社発行)で政治家を風刺する一コマ漫画「政治笑」の連載を開始。以降、2009年10月まで約25年にわたって「一回も休まず」(市村さん)に連載を続けた。翌10年には過去の作品を厳選しまとめた単行本『政治笑』(同社)を刊行。連載当時を知る同社製作担当者は、「政治家の風刺は、批判などではなく、応援する意味を込めているんだと常々仰っていました」と振り返った。

 市村さんの政治漫画をはじめ様々な作品は、これまでに市内各所で度々お披露目されてきた。中央区中央のギャラリー「誠文堂」もその一つ。2012年4月より年に一度、市村さんは毎年展示する題材を変えながら個展を開催してきた。オーナーの中澤洋さんは、「活動も幅広い方だったので、いつも大勢の方が見に来られていた」と話した。また今年6月には同店のギャラリー新築竣工を記念して、市村さんを含む市内漫画家4人による作家展を開催したばかりだった。

 政治風刺や、「さがみっぱらのむかし話」にみられるお化け漫画などと毛色を変えた「温かみある」イラストで親しまれてきた側面もある市村さん。その独特のタッチは、市内の随所で見ることができる。

 毎年こどもの日を前に相模川で開催される「泳げこいのぼり相模川」。この市内に掲示するポスターのイラストは、毎年市村さんが担当していた。2013年に開業した小田急相模原駅前の商業施設「ペアナードオダサガ」では施設のロゴを制作。また今年1月に発行された相模台地区の今と昔をまとめた「まち歩きMAP」では、随所に市村さんのイラストが散りばめられ、地域と歴史を一目で楽しむことができる一冊となっている。

「小学校の美術館」運営に尽力

 「美術館を併設する小学校――」。今から10年ほど前、「児童に本物に触れさせたい」との思いから、当時の校長、職員、そして地域住民を交え、市立桜台小学校内の空きスペースを「美術館」として運営を開始した。月に一度、プロ、アマ問わず様々な地域人らが、美術、芸術の作品を展示。市村さんも創設当初から運営の中心メンバーであり、自身も合同作品展、個人展を継続して行ってきた。運営委員で当時を知る同校教員の眞間秀子さんは、「長年にわたり美術館運営に多大な尽力をしてくださった。同じように志を継いでいきたい」とし、当初来年1月に予定していた市村さんの作品展『線路は続くよどこまでも』は、変わらず展示したいとしている(地域の一般公開日は1月17日(日)を予定)。

 市立博物館でボランティアとして活動する市民学芸員の横須賀浩子さん(南台在住)のもとには、市村さんが入院する直前に描いた下絵が残っている。横須賀さんが学芸員仲間と制作を進めている相模原の郷土の魅力を紹介する「ふるさと相模原かるた」の絵札は市村さんが担当していた。

 横須賀さんは、市村さんとともにまち歩きマップの制作に携わっていた縁から、絵札47枚の作画を市村さんに打診。「取材や画材にかかる費用も含め、一切無償で快く引き受けてくださった」。横須賀さんらが考案した五七五調の読み札が今年7月末にできあがると、それをもとに市村さんが8月中に下絵を書いた。しかし、それに色を付け、絵札として完成させることは叶わなかった。

 入院中、横須賀さんのもとには市村さんから「みんなに迷惑をかけてごめんね」と作業の遅れを詫びる電話が数回あり「退院して、年明けでも構いませんから」と答えると「それまで待ってくれる?良かった。来年なら描けるから」と退院後の創作に意欲を見せていたという。

市村章さん作「政治笑」(『週刊東洋経済』)
市村章さん作「政治笑」(『週刊東洋経済』)
裏面には「さがみっぱらのむかし話」も
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ふるさと相模原かるたの下絵
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