八王子女性史の公開講座を開催する八王子女性史サークル代表を務める 小野 慶子さん 中野町在住 69歳
埋もれた歴史に目を向ける
○…「公的な資料として残るのは売上や役員人事などの記録。人々が何時間働いて、日々何をしていたのかはわからない」。サークル活動の一環で明治から1947年(昭和22)までに生まれた市内の女性50人以上から話を聞き取り、その内容を3年かけてまとめた「八王子女性史」を今年の3月に発行。戦前戦後の織物や農業に携わった女性の生き方、暮らしぶりなどを紹介した。今回の講座では本の中で登場する話し手にも来てもらう予定だ。
○…「機を織り続けた女性がいたからこそ八王子織物の繁栄があった」。これまで目を向けられなかった女性ならではの喜びや悲しみなどを通じて時代を浮き彫りにする。形式ではなく、底に流れる本質に気づくことが大事だという。「たとえば、弱者にやさしい社会は、みんなにやさしい社会になる」。そう考えるのは「女だから女らしくと言われることなく自由に育ててくれた」母親の影響と話す。
○…中学生の頃に父親を亡くし、教員だった母親の背中を見て育ち、自らも教員になった。当時は学校でもお茶くみは女性の仕事だったそう。しかし、男女平等への気運は世の中の動きに先駆け、そのような慣習は自らが身を置く教育現場ではなくなっていた。社会の転換期を経験した。一方で「教員を取り巻くルールが年を追うごとに窮屈になってきた」と49歳のとき26年間の教員生活にピリオドを打った。その後は不登校の子どものためにフリースクールを開設し、13年間活動した。
○…「それぞれの時代に翻弄されながらも、たくましく、したたかに生きる人々の姿がある」。昨年104歳で亡くなった母親も100歳を超えても新聞を読んだり、編み物をしたりとパワフルだった。聞き取りはその強さを分けてもらえるという。「私たちがやらなければ、女性たちの暮らしそのものが、なかったことにされてしまう」。そんな使命感が活動の原動力だ。
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