主宰するギャラリーで「ツバメ」に関する展示を開く 後藤 富美子さん 高尾町在住
「街のあり方」目を向けて
〇…「ツバメ見たやついるか?」。中学生の頃、理科の先生は初夏になるといつも生徒に尋ねた。「見た!見た!」。男子が勢いよく手を挙げた。高尾駅の近くを「たくさん飛んでいた」記憶がある。しかしこのところ「減っている」気がした。駅舎にいつもの巣がなくなっていることにも気付いた。2年前、理由を知りたくて自らのギャラリーで展覧会を企画。「ツバメ来た?」。かつてよく聞かれた季節の挨拶がまた戻ってくれば。「そんな会話が行き交う街は楽しいでしょ」
○…生まれも育ちも高尾町。ずっと駅の近くで暮らしている。高校で「マリリンモンローばかり描いていた」という美術の教諭から刺激を受け、その道へ。教諭はほめ上手でもあり、その気にさせてくれた。進学した女子美術大学では3年の時、かつてから興味があった「写真」を本格的に学びだした。「撮ることで『ここで何が起きているんだろう』『自分が育った文化はどこから来たのだろう』などと考えるきっかけになる」
○…現在は同大学で非常勤講師を務めながら創作活動を続ける。「写真と版画の間」(フォトインタリオ)という作品には独特のシュールな雰囲気が漂う。被写体は風景が主。モノクロが多い。撮影し凹版を作り、インクをつめてプレスしていく。紙を自分で漉(す)いていた時期もある。ひとつを作るのに数か月を要す。作品は国内の美術館やアメリカの図書館に収蔵されている。
○…朝と夕方、毎日駅まで「彼ら」を見に行く。5月上旬、駅舎には2年振りに営巣していた。ツバメの観察と同時に、数年後に移ってしまう駅舎の記録もする。「よく見れば問題点がわかり、移築しないで済むんじゃないかな」。今の佇まいに「顔がある」と愛着を滲ませる。今回、展示は3回目を迎える。人と自然との共存を象徴するというツバメに目を向けることで「街のあり方」「人とのつながりの大切さ」に気が付く機会になればと考えている。
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