来年の出初式ではしご乗りを披露する「八王子消防記念会」総代を務める 河井 春夫さん 横川町在住 65歳
「頭(かしら)っ」誇りに空見上げる
○…総代に就任し初めての出初式を迎える。16歳の時にとび職人で構成される会に加入し、道具もちと呼ばれるはしごを支えたりする役から毎年のように参加してきた恒例行事。近年は重鎮として催しを見守る立場だったが、今回はより責任が増えた。「万が一のために入る保険の手続きをする仕事も私がやるようになった。無事終えることを祈るだけだよ」と表情を引き締める。
○…八幡町のとびの家に育った。当時は木造づくりの家が多かったことなどからとびの全盛期。おやつの時間になると、父親が働くお客さんの家に行ってはお菓子をもらう。そんな幼少時代を過ごした。見上げる父親は寡黙な職人。周囲から「頭っ」と呼ばれる父親が誇らしくてしょうがなかったと振り返る。「格好良かった。早くとびになりたかったね」
○…そんなとびへのあこがれは半世紀、仕事をしてきた今も変わらない。ただ年齢を重ねるごとに、はんてんをまとう誇らしさと共に仕事を通じて人とつながれる喜びを覚えるように。
「頭っ」と呼びかけられると力がわいてくるのだと。「人のつながりを大切にする八王子だからこそ今もそう呼んでくれる。そんな伝統を守っていきたいんだよ」
○…一方で、会では昔ながらの体育会系ではなく、聞く耳をもって若い人たちと接しなければいけないと肝に銘じている。「とびをやる若者が減っている。興味をもってもらいたいね」。一案としてあるのが、八王子の姉妹都市である日光でのパフォーマンス披露だ。60年以上前に実施していたものを再現させたいと考えている。「だから、とびをPRするためにも出初式を成功させなければね」。当日は大きな瞳で空を見上げるつもりだ。
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