写真家で9月にノンフィクションエッセイを出版した 小松 由佳さん 椚田町在住 38歳
書き残す 土地と人の記憶
○…「時代には理解されない事があっても、自分の感覚を見極めながら生きよう」。小さいころに憧れた冒険家たちの物語を読んでそう感じたという。その思いを今も抱き、内戦地シリアの取材を続けている。2人の息子の育児に追われながらも、難民である夫と自分の経験を伝えるノンフィクションを3年かけて書き上げた。「考える余白を残す写真のように書くことを心がけました」
○…出身は秋田県。山に囲まれた生家は、農家を営んでいた。高校から登山の訓練に明け暮れたのは、「未知の世界」への興味から。2003年には日本人女性として初めて、標高世界2位のK2登頂に成功。その一方、遠征先の辺境の地で暮らす人々と出会い「土地固有の文化の中で生きる人」に関心をもち始める。08年には砂漠での暮らしに憧れを抱き、シリアへ。言葉はおぼつかなかったが、一族とともに生活したことは今回の執筆にも活かされた。
○…年に数度取材を重ねる中で、ラクダの放牧をするシリア人男性に惹かれるように。しかし、内戦が始まると男性も元の地に戻ることはできなくなった。一時は取材どころか国際電話でのやりとりも難しくなった。が、「困難があるとしても、それすら喜び」と、13年に結婚。現在は安定した生活のため、家族で日本で暮らしている。
○…アラブと日本、文化の隔たりは大きいという。例えばアラブ人がもつ「ラーハ」と呼ばれる概念は、周りの人とのゆとりのある時間を最も大切にする。一方で日本では時として効率性が重視される。考え方のギャップはあるが「分かりあえないことを理解する」と前向きだ。「八王子は、山が見える街」。人との繋がりもでき、徐々に愛着のある土地になっていると話した。
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