市長インタビュー 変革期への対応 的確に 生活重視の市政運営を
2016年の年頭を飾る企画として、本紙では加山俊夫市長に対し、新春インタビューを行った。加山俊夫市長は相模原市の未来に対する構想や考え方、厳しい財政状況下での2016年度予算などについて率直に語った。
(聞き手/本紙さがみはら南区編集室・佐藤豪)
――早速ですが、昨年(2015年)を振り返っての感想をお聞かせ下さい。
「昨年は、4月に統一地方選挙があり、3期目のスタートを切った年でした。今、相模原は大きな変革期を迎えています。一昨年9月に相模総合補給廠の一部返還が実現し、そのことによって小田急多摩線の延伸の可能性が高まりました。昨年12月には、約35haの共同使用も許可され、その内約10haについて、スポーツ・レクリエーションゾーンとして整備する環境が整いました。また、3月には圏央道相模原ICが開通して、その周辺に産業拠点の整備もスタートしています。リニア中央新幹線駅も実際の工事は始まっていませんが、地権者説明などの事業が始まっており、これからの相模原の50年・100年の方向性を決めていくような事業が動き出してきました。
加えて、人口減少・超高齢化社会に対応するため、安全で安心な暮らしを実現するよう、様々な施策に取り組んできました。まず、4月から小児医療費の助成対象を小学校3年生までから6年生まで拡大させて頂きました。子どもの権利を守っていくため、4月からは子どもの権利条例を施行し、11月にはさがみはら子どもの権利相談室を開設しました。加えて、4月には保育所の待機児童「0」を達成しました。また、2016年1月からは、妊婦健診の助成回数・限度額ともに拡充するため、制度を見直しました。
嬉しいニュースとしましては、スポーツ関係での活躍が目立ちました。東海大相模高校が夏の甲子園で45年振りに全国の頂点に立ちましたし、年初には青山学院大学が箱根駅伝で優勝しました。女子サッカーワールドカップでは、南区在住の岩清水選手が日本代表として出場し、準優勝という素晴らしい成績で市民に夢や希望を与えて頂きました。また、鵜野森中3年生の山口すず夏さんが、アマチュアながら、全米女子オープンゴルフに、14歳という日本女子史上最年少での出場を果たすという快挙もありました。
大変驚いたのは、8月の相模総合補給廠での爆発火災事故です。現在、米軍や国などに原因究明と再発防止策を求めていますが、二度とこのようなことが起こらないよう、万全の対策を講じて頂きたいと思います。
下水道問題につきましては、市民の皆様には大変ご迷惑をおかけし、お詫び申し上げます。排水設備の無断接続に伴う使用料未徴収や受益者負担金の問題がありましたが、組織体制や手続きの見直し、罰則の強化など、しっかりとした体制づくりを進め、二度と同じようなことがないように努めていきます」
――新年度予算編成の骨格、テーマ、重点施策をご説明下さい。
「予算規模として2015年度と大きく変わらないものと思っていますが、市税は2・3%位の伸び率を想定しています。ただ、人口減少や少子高齢化、先行き不透明な経済情勢などによる医療費や生活保護など扶助費が年々増えていますので、あらゆる事業の精査・手法の見直しを徹底して歳出の削減を図るとともに、これまで以上に創意工夫を持って事業立案、予算編成を行っていきます。中でも、子育て、教育、医療、福祉・介護など市民生活に直結する分野に関しては、しっかりと予算を確保し、最優先で取り組んでいきます。
また、将来発展が期待出来る分野にも力を入れていきたいと思っています。具体的には、市の自主財源を確保するため、圏央道のIC周辺に新たな産業拠点として工業団地などの整備を進め、企業誘致を強化する他、雇用の場の確保にもつなげていきたいと思います」
――小田急多摩線延伸とJAXA移転問題についてお聞かせ下さい。
「小田急多摩線の延伸は、まちづくりの大きな柱で、不可欠なものです。東京圏の鉄道整備は国の交通政策審議会により、15年に一度審議される、鉄道整備に関する答申に基づき行われています。前回2000年の答申では、小田急多摩線延伸について、今後整備について「検討すべき路線」と位置付けられていました。本年度中に行われる予定の答申では「整備を推進すべき路線」に格上げしてもらうべく、色々な働きかけをしています。延伸に向けこれまで大きな障害となっていた、相模総合補給廠の一部返還が決まったことで、その機運がさらに高まったと思います。
JAXAが移転するかもしれないというお話は、国の地方創生の施策の一つとして、東京圏にある国の機関の移転を岐阜県と秋田県が希望しているものです。相模原市としましては、これまでJAXAとともにまちづくりを進めてきましたし、宇宙産業に関係する企業も、ものづくり都市である相模原には数多くあります。小惑星探査機「はやぶさ」のカプセル帰還の時には、市民にあれだけの感動や勇気を与えてくれましたし、これまで市内企業との連携や、市民との交流の実績を考えますと、移転してほしくありません。
相模原のシンボル的な施設でもありますので、各種団体とも協力して、移転しないよう働きかけをしてまいりたいと思っています」
――麻溝台・新磯野地区など、南区のまちづくりの構想をお聞かせ下さい。
「南区でございますが、相模大野はボーノ相模大野や駅ビル、百貨店という3つの核『3核構造のまちづくり』が整った他、小田急相模原も再開発組合施行で2つの再開発事業が終了しました。利便性、防災性や安全性なども含め大変住みやすくなったと思っています。
麻溝台・新磯野地区は、相模原愛川ICから約3Km、小田急相模原駅や相武台前駅から約2Kmの位置に、約148haの事業計画区域があります。この地区では本市の新たな産業拠点として、まちづくりに向けた取り組みを始めたところです。ここには1000人を超える地権者の方がいますが、とても広い地区ですので、3分割にして整備を行っていく予定です。圏央道開通、IC開設などを踏まえ、幹線道路が交差する中央部の約38ha部分を、市の施行による土地区画整理事業により、先行して市街地整備を進めることとしています。具体的には、ICからのアクセスや隣接する麻溝台工業団地との連続性を考慮し、西側に「産業系ゾーン」を、相模台地区など、住宅がある東側には「住居系ゾーン」を配置します。また、北部、南部の後続地区につきましては、民間活力による開発行為なども視野に入れて整備手法の検討を進めていく予定です。
併せて、相模大野駅から県道52号を通って、北里大学病院や麻溝台地区、原当麻駅までをつなぐ新しい交通システムを導入します。これは連節バスを運行するもので、バス事業者と共同で、計画を進めていく予定です」
――最後に新年に際して、本紙読者へのメッセージを御願い致します。
「相模原は大きな変革を迎えようとしています。加えて日本全体が人口減少・高齢化社会を迎える中でも、市民の皆様が安全・安心な暮らしが出来るように市政運営を進め、子どもたちが夢や希望を持てるようにしていきたいと思っています。
市政への変わらぬご協力を賜りますようお願いするとともに、本年が皆様にとって、良い1年となることを心からお祈り致します」
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