手口は年々巧妙化
依然として特殊詐欺による被害が後を絶たない。相模原南警察署管内でも、今年1月から7月の間に30件以上の特殊詐欺が発生し、約4600万円の被害が報告されている。さらに新型コロナウイルス感染症により啓発活動などができないことも影響を与えているようだ。そこで本紙では小野正男署長にインタビューを行い、特殊詐欺の現状、取るべき対策などについて話を聞いた。
依然増加傾向に
―相模原南署署長に着任して約1年、管内の治安についてどのようにお考えですか。
刑法犯については南署、県警全体で見てもマイナスになっています。特殊詐欺に関しては県警全体ではマイナスですが、南署は増えている状況。住宅街が多く、高齢者が多いことも要因として考えられますが、根本的な原因は分かっていません。それでも様々な対策は行っています。昨年は最終的に年間で70件の特殊詐欺被害がありました。年末年始に増加する傾向がありますので、今年7月時点で30件以上というのはかなり多く、特殊詐欺だけが増えている状況といえます。
―特殊詐欺の内容は変化しているのでしょうか。
現金を騙しとる以前からの「オレオレ詐欺」、通帳やキャッシュカードを騙し取ってお金を下ろす「預貯金詐欺」、相手を騙して偽物のカードが入った封筒と本物の封筒をすり替える「キャッシュカード詐欺盗」、そして「還付金詐欺」が発生しています。特に昨年あたりから「キャッシュカード詐欺盗」や「預貯金詐欺」が増えてきている印象です。
―そんな簡単にキャッシュカードを預けてしまうものなのでしょうか。
最近では役所の職員を名乗り、還付金や補助金など興味のある事柄を誘い文句に使うことも多いようです。また、場合によっては警察官を名乗って「あなたのキャッシュカードが悪用されている」等の言葉を使うこともあります。犯人グループは入れ替わり立ち替わり人が増えていくこともあり、気が付けば騙されてしまっているなんてこともあります。
―被害総額は?
県警でも管内でも減ってきています。これは対策が進んでいることの証かもしれません。コンビニエンスストアのATMで電話をしながらお金を引き出している時や、高齢者が高額の電子マネーを購入する場合など、店員さんが注意を払っていただき、情報を提供していただいています。また、金融機関では引き出せる金額の上限を下げていただくなどの対策をしていただいています。件数が増えても被害額が下がっているのは、施策が功を奏しているのだと思います。
―実際の抑止件数は。
今年1月から6月までの管内の抑止件数は13件になります。目に見えて増えているわけではありませんが、コンビニエンスストアさんなどで抑止いただいています。南署では「俺の店作戦」と銘打ち、交番勤務のお巡りさんなどが、所轄内のコンビニにマメに足を運んで情報提供を続けています。原則一店舗につき一名。店側に最新の情報を伝えて、何かあったら連絡をもらえるような「顔の見える関係づくり」を進めてきました。「自分の地元から犯罪を出したくない」との思いから、署員も足しげく通って声がけを続けています。相対して話をすることが大事なところ。分からなければその場で質問もしていただけますし。
固定電話対策を
-市民の皆さんが被害に遭わないためには、どのようなことに注意すればいいでしょうか。
犯人グループからの電話に出ないこと、そこが一番重要です。そのために留守番電話の常時設定、もしくは防犯機能付き電話の設置などを呼び掛けています。特に高齢者の方は真面目な方が多いので、電話が鳴るとすぐに出てしまう。まず一度は電話に出ないようにしてもらい、留守電を聞いて知人であれば後からかけ直していただきたい。防犯機能付きの電話は先に音声案内があり次いでコールとなるため、鳴った電話には出ていいという安心感がある。特殊詐欺は、ほぼ固定電話にかかっているのが現状ですので、固定電話を変える効果は絶大かと思います。詐欺の電話だと分かっていても話をしている内にだまされてしまう、それくらい詐欺の手口は巧みになっています。固定電話をなくすのが究極の対策とも言えますが、どうしても必要な場合があるのも事実。固定電話に後から接続できる防犯対策装置もありますし、ご家族からプレゼントしていただくのもいいかなと思います。
コロナ禍の現状
―今年は新型コロナウイルスの感染拡大で、社会全体にも大きな影響が出ています。特殊詐欺などの犯罪にも変化はあるのでしょうか。
前兆電話の数は変わらず、毎日かかっているのが現状です。注意を喚起するためのキャンペーンなどができなくなったのが、一番大きい影響かもしれません。南署でもホームページやツイッターを用いて、振り込め詐欺や交通事故などの情報を発信していますが、人を集めて講話することができないのは残念な点です。また、「新型コロナウイルスに関する給付金が出る」などを話のきっかけにした詐欺も起きています。
―犯人の検挙はやはり難しいのでしょうか。
犯人グループは役割分担が決められ、お金を引き出す役目の多くはインターネットで集められた人たちです。若い男性だけでなく、女性や高齢者などもいます。もし逮捕できても、グループの本体まではなかなか辿り着けない。騙されないことも大事ですが、安易に犯罪の片棒をかつがないことも重要です。特に今は新型コロナで仕事がなく、困窮している人もいるでしょう。それでも甘い話に乗らないでほしい。犯人グループは「絶対に警察に捕まらない」「組織が弁護士をつける」など甘い言葉を並べますが、実際は何もしません。一度犯罪に加担すると、抜けようとしても脅されて抜けられなくなります。まさに人生が変わります。想像力を働かせていただきたい。
コツコツと継続
―南区については。
地域の方が本当に熱心。地域のことを愛して、良くしようという気持ちがある。活動に協力的で、応援してくれる人も多い。また文教地区でもあるので、子どもの犯罪が増えないように、また巻き込まれないように、継続的に対策を講じなければならないと感じています。新型コロナウイルスの影響で中断していますが、管内にある大学とのコラボレーションも進行しています。防犯には特効薬はありません。新しい対策を模索しながら、情報発信などを地道にコツコツと続けていくこと。犯罪に巻き込まれる人を一人でも少なくしたいです。
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