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相模原に避難されている方の声 3・11と一言でまとめられてしまうが、被災された方の思いも風景も決して一様ではない。時間をかけてでも一人ひとりに手を差し伸べていきたい 「原発は福島のためじゃない」―― 林真己君/福島県双葉郡富岡町から母と避難中。南区東林間出身。16歳。

公開:2012年3月8日

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今月には、3度目の一時帰宅の機会が巡って来る。「戻るかどうかは家族で話し合って決めると思う」
今月には、3度目の一時帰宅の機会が巡って来る。「戻るかどうかは家族で話し合って決めると思う」

 中学校の卒業式の朝、自宅を出たきり、帰宅できなくなるなどと、だれが想像しただろう。

 式の後、友人宅に集っていた際、震災が発生し、ライフラインが断絶した。携帯電話も直後は通じていたが、じきに繋がらなくなった。その日は車中で一晩を過ごすことに。その後、別の友人宅に移り、両親が隣町の避難所にいると耳にした。家族との再会は、震災発生から3日後のことだった。

 同じころ、放射能漏れの噂を耳にした。数日後、避難所に来た消防団員の説明で、福島第1原発から20キロ圏内の自宅が、立入禁止区域になったことを知る。

 結局、3週間もの間、3カ所の避難所を転々とした。どの避難所も、人がひしめき、固い床の上に直に毛布を敷く状態。とても配慮が行き届いた状況になく「高齢者の人は特に辛そうだった。食事も最初は一日一回でした」。少しでも余裕のあるスペースを探し移動を繰り返すも、見通しのつかない日々。春から、福島県立富岡高校への進学が決まっていたが、震災から1カ月後、幼稚園までを過ごした祖父母宅に身を寄せ、県立上鶴間高校(南区上鶴間本町)に編入した。「幼稚園のころの友達は、よく覚えていない。でも、お盆などで遊びにきていて、馴染みのある場所でした」。

 転入後、同校の生徒が震災直後に立ち上げた復興支援チームから「活動に当たって、被災してきた人に話をききたい」という申し出があった。それを機に、自らもその一員に。チームには、岩手県立大船渡高校からの被災者もいたため、同校を直接支援することに。夏には、相模大野駅前での街頭募金も行った。「最初、大きな声がなかなか出せなかった。でも、みんなしっかり呼びかけていて、えらいなと思いました」。仲間からは「(実際に被災した)自分が気づかなかったことにも目を向けた意見が出ることも多いです」と活動の手ごたえを感じている。

 一方で、今も2カ月に一度、学校でカウンセリングを受けている。「転入当初は、周りの人から離れ離れになった友達のことなどを聞かれるのが辛かったけれど、クラスメートに話せないことを、正直に打ち明けられる人がいるのは助かる。こういう話をできる場や、相模原に避難している人同士が交流できるような場があればいいと思う」

 今は、家族で地震の話は、「報道を見たときする程度」。だが、一時帰宅や仮設住宅で暮らす人の報道はどうしても気になる。父親は現在も福島に残り、勤務を続けているため、家族が集まるのはまとまった休みが取れたとき。いまや自宅は防護服なしでは近づくこともできない状況だ。そのため、これまで2度あった自宅への一時帰宅は、両親から止められた。「東電はお金の面は助けてくれているけれど、街に戻るための作業は進んでいるのかな」

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 各地で取りざたされる放射性物質の数値情報や、その報道には「(首都圏より)福島のほうが高いのに」とぽつり。「(事故のあった福島第1)原発は、福島(の電力供給)のために作ったわけではない(編集室注/福島県の電力供給は、東北電力が行っている)。今まで当たり前に福島からの電気を使ってきたのに、事故が起きたら掌を返して『危ないから原発をなくせ』というのは、何かおかしいと思う」と複雑な心境を吐露。「そういう人は、自分の身を守ることばかり考えている気がする?」と問うと、小さくうなずいた。

 最近は、家族と進路の話もするように。高校受験の時は、福祉や医療に関心があり、専門コースなどから志望校を決めた。「今はデスクワークも気になる。選択の幅は広がったかも」。福島の友達とは今もメールでやりとりを続けている。避難した近くにいる仲間で一度集まろう、という話も出始めた。「簡単にはいかないが、戻れるようになったら戻りたい」
 

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