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相模原が"第二の沖縄"に!? 相模原市文化財調査・普及員 山田真也

社会

公開:2015年8月6日

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相模湾に集結した米軍艦(米国国立公文書館蔵)
相模湾に集結した米軍艦(米国国立公文書館蔵)

 もしも広島、長崎に原爆が投下されていなかったら相模原の特に南部の小田急沿線地域は”第二の沖縄”と化していたかもしれない。今から70年前の昭和20(1945)年9月1日を期して日本版”ノルマンディー上陸作戦”、アメリカ軍の世にいう「相模湾上陸作戦」(コロネット作戦)が実行に移されていれば。相模川左岸の茅ケ崎海岸(チガサキ・ビーチ)に上陸した米軍と必死の反撃をする日本軍の激しい戦闘が繰り広げられるところだった。茅ケ崎・藤沢から相模原に至る旧高座郡地域は、米軍の容赦のない猛攻により、山野の地形が変わり果て、そして死屍累々(ししるいるい)の犠牲者が山となるような、沖縄戦と同じような惨状を見ることになったかもしれなかった。

 「相模湾上陸作戦」とはどんなものか。昭和16年12月に始まった太平洋戦争は、当初は赫々(かくかく)たる戦果をあげて、国民も高揚感に酔いしれた。しかし、昭和17年6月のミッドウェー海戦での大敗北以来、ガダルカナル島、アッツ島、サイパン島と敗退の一途をたどった。米軍の日本上陸、首都東京の制圧は時間の問題だった。3月から5月にかけて東京・横浜などの都市部をまずB29で空襲して戦意を喪失(そうしつ)させた。そして、相模湾と千葉県の九十九里浜から上陸して東京を挟(はさ)み撃(う)ちにするという作戦計画だった。

 相模湾に上陸した米軍は約百万の兵士と圧倒的な武器・弾薬・車両をもって一気に北上して陸軍士官学校を中心とする相模原に進攻する。ここを集結・準備拠点として兵力と兵站(へいたん)を整えてから三隊に分けて東京へ進攻する作戦だった。大量の兵士と戦車、航空機をもってしても、米軍が一番恐れたのは日本兵と民間人の決死の反攻だった。枢軸国のイタリアは昭和18年9月に、ドイツは昭和20年5月にすでに無条件降伏していた。昭和20年4月の沖縄本島の上陸作戦で「決して屈せず死力を尽して反撃してくる」姿を目(ま)の当たりにしたアメリカ人にとって日本人は脅威であり、不気味でもあった。

 しかし、この作戦は幻に終わった。8月6日、9日と広島、長崎に原爆が投下されて、日本が無条件降伏したからだ。それでも、占領軍(米軍)は真っ先に旧陸軍士官学校へ第一騎兵師団などを送り込んできた。そして周辺の電信連隊や通信学校にもアメリカル師団やパラシュート歩兵連隊などを送り込んできた。相模原は、米軍にとっては戦略上きわめて魅力的な土地だった証拠だ。広大な陸軍造兵(ぞうへい)廠(しょう)も含めて軍事施設が集中しているし、厚木基地や横須賀の海軍基地も近い。東京・横浜も近い。占領政策上でもこの上ない好立地の拠点だと高く評価していたようだ。その証拠に、士官学校(キャンプ座間)、造兵廠(相模補給廠)、電信連隊(米軍ハウス)の三カ所は、戦後70年経っても完全返還には程遠い。それどころか、キャンプ座間にはアメリカ本土から陸軍第一軍団司令部が移転しており基地機能の強化、恒久化が進められている。日本はきっとアメリカ合衆国ニッポン州なのかもしれない。

【前回のコラムでマッカーサー元帥が厚木基地に降り立った日を8月28日と書きましたが8月30日の間違いです。28日は先遣隊が到着した日でした。お詫びして訂正します】
 

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