寒川俳壇に所属、非営利団体による俳句勉強会(11月)で講師を務める 根岸君子さん 宮山在住 89歳
独りの時間が嬉しい
○…テーブルにうずたかく積み上げたノートにはどれもびっしりと俳句が書かれている。「畑で草むしりをしていると思いつくんです。だから独りの時間が嬉しくてしょうがない。外出自粛だった時も退屈しなかった」。使い込んだ辞典は表紙が反っている。日ごろから細かい字を探して目が鍛えられたのか、老眼鏡は使わない。
○…平塚市の農家に生まれ、戦時中は秦野の女学校に通った。授業のかわりに校内に畑や防空壕を掘り、時には敵機から隠れて息をひそめる青春時代を過ごした。「授業なんてほとんどなかったし、人参を育てて先生にあげたの」。終戦後は、もんぺからスカートに変わった。23歳で寒川に嫁いだ時、一番嬉しかったのが相模線が走っていたこと。「電車から降りた人が野菜を買ってくれると思ってね」。朝から晩まで裸足で農作業に汗を流しながら、3人の子を育て上げた。
○…40歳のころ、義父が脳梗塞で倒れた。体が不自由になった義父を元気づけようと近所の人々が小さな俳句会を始めた。「君子さんもやんなよ」と言われて詠んだのが「春光や破れ障子を開け放つ」。どこの家の障子も同じだったが、子育てを象徴する表現を褒められた。「野良着でも化粧しなくても参加できる」と俳句にのめりこんで40年。物事はじっくり観察するようになった。今年春には「花火師が鷲掴みして塩を撒く」が寒川俳壇で最高の句に選ばれている。
○…このインタビューは最初遠慮していたが「俳句の普及になるかしら」と目を輝かせた。俳壇も高齢化が進み、一人でも若手に加わってほしいところ。手にこぶしを作り、声をしぼり出すように発したのが「これほど、これほど楽しい遊びはありません」
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