寒川の北部・南部公民館でバドミントンを教え続ける 佐藤 藤男さん 一之宮在住 81歳
やる気の灯火 お裾分け
○…公民館でバドミントンを教え続け8年。手ほどきを受けた町民も相当な数に上るだろう。中学や高校でも出前指導し、地元クラブの代表も務める。指導でこだわるのは試合に勝つことではない。挨拶や仲間同士の声かけ、人の話を聞くといった基本姿勢だ。受講生の年齢も幅広い。「若い人には追いつけない、自分の健康作りになるからやってます」と苦笑い。教え子たちが和気あいあいとしている姿を眺めるのが醍醐味だ。
○…大分県日田市生まれ。小学2年で竹槍を握り、藁人形に突進した思い出がある。授業は時折先生から黒板消しやチョークが飛んでくる厳しいもので、頭が痛いと言って登校をしぶった。そんなある日、下校中に出会ったのが一匹の仔犬。親を説得し、世話と勉強をさぼったら犬が捨てられる条件で飼い始めた。仔犬が懸命に「お座り」を覚えるのを見て、自分も机に向かうようになり、いつしか仔犬の愛称は「師匠」になった。その後も専門学校で学び、技術者だった父と同じ道へ。川崎の部品工場で長年ロボットなどの修理を担当した。バドミントンは40歳の頃に同僚と始めた。工業地帯はクラブ活動も盛んで、他社選手の試合を観て研究したという。
○…75歳まで働き、今は一人暮らし。壁には2年前に他界した妻・照子さんが微笑む。料理も洗濯もやった事がなかった。「女房を、おいとかお前とか呼んでいた。大切さが分かった」とつぶやく。好きな卵焼きを作っても妻の味にはならない。「自分にはこれから先がないから、何か残したい。佐藤が生きていた頃はこんな事があったと、誰かの思い出になるような」。心は長い坂道を登っている最中だが、杖がわりにラケットを握っている。小さな師匠が灯してくれたものは消えていない。
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