震災直後の5月から、野元さんは大船渡市での復旧・復興支援活動に参加し、これまで自身が専門とする防災教育の研究者として、同市の関係者、施設を回りながら調査研究を続けている。現在、同市内では、仮設住宅の入居数が3分の1以下に減少。高台への建築が進む復興住宅への移住が増え、小学校の再開やグラウンドの使用について要望が増えているのを背景に、仮設からの移住はさらに進んでいくと見る。沿岸南部の末崎地区には約12mの堤防が完成。大船渡町ではホテルが開設、仮設商店街は縮小傾向にあり、個店を建て直して商売を本格的にスタートさせる店主などもおり、経済面での明るい話題も増えているという。
震災から5年が経過する今、さらなる復興を進めていく上での今後のカギとして、野元さんは「地域力」とリーダーの存在を挙げる。これまで同市の復興の様子を見続ける中、復興スピードが早い地区には、自治会などでの強固な人間関係と団結力があり、確固たる優れたリーダーや役員たちがいた。高台移転などの復興への取り組みは、住民たちと合意形成しながら早々に決断。自治体に先駆けて前進していく地区もあった。こうした各地域の「地域力」の差は、進めてきた防災教育の差となり、結果(被災)として表れた面もある。日頃から「命を守るための学習活動」として防災訓練・避難訓練を積んでいた赤崎地区では、震災直前の2月9日に起きた宮城県沖地震の津波警報発令の際、住民が指定の避難所に逃げた避難率は100%を達成していた一方で、大船渡市内全体では避難率が5・8%だったことから、取り組みによる意識の差が各地区での被災の度合いに差がついたとも、野元さんは指摘。被災地以外でも、「大規模地震の際、相模原などの地域には津波は来なくても、普段から災害を意識した取り組みをしておかないと、家具の転倒による圧死や火災で死者が出てしまう可能性は大きい」と危惧する。
(自治会など)地域で助け合う力、強い牽引力を持つリーダーの存在は、復興のカギとなるだけでなく、不意に襲いかかる大災害への備えとして、今後、被災地以外の各地域でも確立させていく必要があると訴える野元さん。震災から5年、復興の過程を見つめてきた5年。被災地での人々の姿を思い返すと、防災への切なる思いが改めて胸に去来する。「震災を風化させないこと、それは忘れないことだけではなくて、生かしていくことなんだと思います。赤崎地区の防災・避難訓練のような例を教材にして、3・11の日には、毎年、毎年、震災そして防災について考え、学ぶ機会にしていくことが、私たちにとって大切な事ではないでしょうか」
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アゴラ春号5月3日 |
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