市内でランチ営業やイベントへの出店を行なっているキッチンカー「FATRAT」は、コロナ禍で「新しい生活様式」が叫ばれる今こそ柔軟に対応する店が街に必要だと感じ、「移動式子ども食堂」やテイクアウト形式のイベント開催など新たな取り組みに注力している。
一昨年から市内で営業を始めた同店。決まった場所に店舗を構えない「キッチンカー」という営業態勢を取ったきっかけは東日本大震災だった。同店の小池玄太郎代表は、当時テレビで被災者支援の炊き出しを行う様子を見て、災害に強いというメリットに心惹かれた。「相模原でも計画停電を経験し、電気がない生活に苦労した。キッチンカーはそんな場所でこそ活躍できると可能性を感じた」と振り返る。同店をオープンさせてからは地元である相模原に貢献したいという思いから、市内で日々営業して回った。
店に変化が起きたのは新型コロナウイルスの感染拡大が始まった今年の3月。これまでのランチ営業では売り上げが振るわなかったという市役所前に店を出すと突然、行列ができた。飲食店の営業自粛が広がり、買い物にも行きづらいといった情勢の中、屋外でテイクアウト販売を行うキッチンカーの需要の高まりが背景にあったと、同店では推測する。
新型コロナの影響を受けている市民を継続的に支援したいという気持ちから同店は、通常営業の一方で中学生までの子どもを対象に専用メニューを300円で販売する「移動式子ども食堂」を開始。3月から6月までと小・中学校の夏休み期間中は週に6日間営業し、約800食を提供した。「営業自粛した方が良いのかと葛藤もあったが、大変なのは家でご飯を作るお母さんたち。手助けしたいと思った」。
同事業を多くの家族連れに利用してもらう中で新たな取り組みにも着手する。それが安全なテイクアウト形式でのイベントの開催。小池代表は「キッチンカーのメリットを最大限に発揮できる」と考えた。今年は多くのイベントや夏祭りが中止になっていることから「夏の思い出をプレゼントしよう」と子ども食堂の最終日、かき氷の無料提供を行った。その際の反響を受けて、8月には「夏祭りを持ち帰り」をコンセプトとした「小さな夕涼み会」を田名地区で開催。焼きそばなどを求め多くの人が集まったが、3密対策を取って実施し、無事にイベントを終えることができた。
今週末の18日には「秋のビール祭り」も同地区で行う。ランチ営業を始める際、一番最初に場所を提供した田名地区に恩返ししたいとの思いから開催を決めた。「コロナ禍で子どもたち・家族・社会のために頑張っている大人たちが楽しめるひと時をご提供できれば」と意気込んでいる。
今後は新たなイベント開催はもちろん、キッチンカーを出店できるような開かれた場所づくりや地域の活性化につながる取り組みにも携わりたい考え。「これからも地元に貢献していきたい。盛り上げていけたら」と、これからもキッチンカーを相模原に走らせる。
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アゴラ春号5月3日 |
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