県教育委員会が主催する作文募集「第6回かながわ『いのちの授業』大賞」で、市内緑区の相原高校畜産科学科2年の角田(つのだ)真一(しんいち)さんが大賞(知事賞)に次ぐ神奈川新聞社賞を、吉川遙香(はるか)さんと塗井(ぬりい)のどかさんが優秀賞を受賞した。同一校から3人が受賞するのはこの取り組みで初めてのこと。
この取り組みは、県教委が展開する「いのちの授業」の一環として、学校や家庭、地域など様々な場面で、「いのち」について考えたり、感動したりしたことを書いた作文を募集するもの。今年は県内の小・中学校、高校、特別支援学校の児童生徒から7038作品が寄せられ、審査会を経て大賞1点を含む11点が優秀作品として選出された。3人は昨年12月に横浜市で表彰を受けた。
相原高校で畜産を学ぶ3人は部活動でも畜産部に所属。放課後や休日には、酪農家で同校OBの藤曲(ふじまがり)和美(かずみ)さん(73)が経営する南区磯部の藤曲牧場で実習を行い、学校とはまた違った経験を積んでいる。今回、3人は藤曲牧場で飼育されている多くの牛と携わる中で感じたことを作文に込めた。
『命について』と題して作文した角田さんは、普段学校でもなかなか立ち会う機会のない分娩に携わり、そのお産の様子を臨場感のある文章で綴った。角田さんは取材に対して、「命の誕生の瞬間を初めて見ることができた。大きな賞がいただけてうれしい」と受賞を喜んだ。
『親子の死から学んだこと』と題した吉川さんは、分娩で子を亡くした母牛から搾乳をしたことで「母が子を産んで初めて乳が出る」と実感。その母牛も分娩後の不調により乳廃牛とされたことから、『牛乳は牛達の命を分けてもらっているということをもっと多くの人に知ってもらい、常に感謝の気持ちを忘れないでいてほしい』と綴った。また取材では「牧場実習で効率や段取りなど仕事としての学びも深まった」と語った。
「牧場での実習は貴重な体験。そこで感じたことを作文にし受賞できたのはうれしい」と話す塗井さんの題は『コストを利益に変えるため、私達にできること』。作文で塗井さんは、分娩で弱ってしまった母牛を屠畜するという現実にふれ、牧場経営の厳しさを学んだ。取材では「当たり前に飲んでいる牛乳だけど、経営者は利益を考えないといけない。飼育するだけでなく時には辛い判断をしなければならない」と実習で感じたことを述べた。
今回、牧場主の藤曲さんも“授業実践者”として受賞。藤曲さんは、「熱心に一生懸命に取り組んでいる」と3人を称えた。
畜産部顧問の小笠原直樹教諭(33)は「牧場での貴重な経験を自分の中で留めておくのではなく、多くの人に伝えることは大事なこと。藤曲さんには大変感謝している。生徒もよく頑張ったと思う」と話した。
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アゴラ春号5月3日 |
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