2016年7月に障害者施設「津久井やまゆり園」で起きた殺傷事件。殺人罪などで起訴された元職員の植松聖被告に16日、死刑が言い渡されました。
この一審判決を一つの節目とし、同園の入倉かおる園長より、事件からこれまでを振り返っていただく手記をお寄せいただきました。
事件を決して風化させることの無いよう、本紙ではこれからも報道の立場で社会に問い続けたいと思います。
津久井やまゆり園には、園の歌があります。長い歴史のなかで歌い継がれてきたこの歌を歌う時、涙が溢れるのは私だけではありません。いつか涙を見せずに歌えるようになる日を願いながら、再び千木良の地に戻る日を願いながら、あの日からずっと、目の前の業務にあたってきています。それは、利用者の皆様やご家族の皆様も同じ思いで、一歩ずつ進んできました。
平成28年7月26日に起きた事件は、19名の方の尊い命を奪い、多くの方を傷つけただけでなく、これまで津久井やまゆり園に関わった多くの人達の人生を狂わせてしまった出来事でした。今思い出しても、辛くて悲しくてくやしい記憶しかありません。あの日の前に戻りたい…と何度願ったことでしょう。朝目が覚めて、全部が夢の中のことだった…となっていたら、どれだけ良いだろうと、何度も思いました。
そんな私達を勇気づけてくれたのは、利用者の皆様でした。事件があったあの日からも、お一人おひとりの利用者様には、避難した体育館の中ではありますが、それまでと同じ毎日が繰り広げられていました。当たり前のことではありますが、ご飯を食べて、お風呂に入って、お布団で寝ました。その一つひとつの支援を続けていく中で、私達は沢山の勇気をもらいました。生きていることの素晴らしさを教えてもらいました。
思えば、あの日からずっと走り続けています。振り返っても後戻りはできないことを知っています。まだまだ走り続けなければなりません。亡くなられた方の無念な思い、ご遺族の深い悲しみに心を寄せて、前に進んでいくことが、私達の使命だと思います。
令和3年度には、新しい津久井やまゆり園がスタートします。その時には笑顔で、津久井やまゆり園の歌を歌えるようになっていることでしょう。
みどりの山に かこまれて
根強い恵みの しずかなる
千木良の里の やまゆりよ
のびよ ためろう こともなく
津久井やまゆり園園長 入倉かおる
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アゴラ春号5月3日 |
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