神奈川県全域・東京多摩地域の地域情報紙

  • search
  • LINE
  • MailBan
  • X
  • Facebook
  • RSS

「三度許すまじ 原爆を」 平和の地築き 反核期す

社会

公開:2015年8月6日

  • LINE
  • hatena

 緑区西橋本にある「核兵器禁止運動発生の地」。それが旧ひかり幼児園に隣接する、その名も平和公園。公園には悔恨の歴史が刻まれた「平和祈念之碑」がある。建立したのは、幼児園の園長を務めた伊倉二郎さん。終戦した1945年から3年後の8月6日、広島に原爆が投下されたその日に犠牲者を悼んで建てた。この時から、伊倉さんの核兵器廃絶に心血を注いだ反核運動が本格化していく。

 伊倉さんは静岡県御殿場市出身。14歳の頃、出稼ぎで相模原へと移り住んだ。鉄道省(現JR)の修理工を務めながら生計を立てつつ、子どもが好きだったことから独自に自宅の敷地を利用して幼児園を開いた。しかし、17歳のときに作業中に負った重度のやけどの傷が残り、兵役検査では、甲、乙、丙、丁、戊の段階のうち「戊」と認定され兵役免除。自身は「兵役を全うしたかった」ため失意の日々を過ごしたが、これを機に、本格的に幼児園の経営に力を傾けていった。

 戦時中、周囲は原っぱで、家屋は乏しく、幼児園だけが佇むようにあった。当時、幼児園には痩せ細った子どもたちが元気いっぱいに集まってきた。その数約60人。青空日曜学校として営んだ幼児園では、キリスト教の教えに則り、礼拝を励行し、聖書を拝読した。時には空襲におびえそうになりながらも、やめることはなかった。戦況は、1942年の太平洋戦争開始から日を追うごとに悪化し、「負けるのも時間の問題だと思った」。そして、広島・長崎への原爆投下。爆弾は地上580mの空中で爆発し、爆風で人、まち、もろとも焼きつくし20万人以上の命を奪った。はじめは被害の一報をラジオ放送で聞いたが、後日、実際の惨状を知った。戦禍による屈辱から、核兵器禁止・原水爆禁止への思いを固くした。

 終戦を迎え、それまでの国に依存してきた生き方を顧み、残りの人生を反核と平和教育中心に尽くす気概から「80年計画」と銘打ち、これまでの人生から大きく舵を切った。その最初が幼児園を利用した青空日曜学校。再スタートした幼児園は、園舎を増設し幼稚園となり、平和と命の尊さを伝え、心と心を紡ぐ貴重な学び舎となった。ここでは日曜日になると平和集会が開催されるようになり、毎年8月15日には平和記念日として、祈念集会が行われる。平和を願う集会は40年以上の月日を経て、今もなお続く。こうした地道な活動が徐々に周囲に浸透し、不戦、平和活動は広がりを見せていった。約50年前には米国・マンハッタンで開催された原水爆禁止大会にも個人として出席した。

 2010年に閉園となった園の跡地は市に寄贈され、「平和公園」の名で残された。平和への願いは、戦中、子どもたちの笑顔あふれる園舎があったこの地に息づき、後世へと繋がれる。一方で伊倉さんは、連日の安保法制をめぐる情勢について「悪い方向に向かっている」と危惧し、顔をしかめる。「あの辛さ、過ちを二度と繰り返してはならない。子どもたちの笑顔のため、日本のため、これからも活動を続けていきたいと思います」と強調。断固たる決意を持って、89歳の今も、これらからも、不戦と平和維持に向けて不断の努力を続けていく構えだ。

 園歌の一つ、「原爆許すまじ」では、ある一節が4番にわたって繰り返される。その言葉は、自身が戦後身を捧げてきた、反核運動にかける思いそのものだ。

「ああ許すまじ 原爆を

三度許すまじ 原爆を」
 

自身の肖像画を背にインタビューに答える伊倉さん
自身の肖像画を背にインタビューに答える伊倉さん
平和祈念之碑(左)と核兵器禁止運動発生の地碑
平和祈念之碑(左)と核兵器禁止運動発生の地碑

戦後70年 語り継ぐ戦争の記憶

タウンニュースの各発行エリアで企画・編集した関連記事まとめ

http://www.townnews.co.jp/postwar70.html

さがみはら中央区版のローカルニュース最新6

「念願」給食室が完成

酒気帯びで議員辞職

酒気帯びで議員辞職

田崎氏

4月25日

駐車場がない!衣料店が解決

「田名にもう一度鯉のぼりを」

「田名にもう一度鯉のぼりを」

有志がGWにイベント

4月25日

変わりゆく花火大会

供用10年

田名バスタ

供用10年

4月25日

相模原市のご葬儀

ニーズに応じた家族葬プランをご用意

https://ceremonyhouse.jp

<PR>

あっとほーむデスク

  • 4月6日0:00更新

  • 3月30日0:00更新

  • 3月23日0:00更新

さがみはら中央区版のあっとほーむデスク一覧へ

バックナンバー最新号:2024年4月26日号

もっと見る

閉じる

お問い合わせ

外部リンク

Twitter

Facebook