大船渡市と陸前高田市の間にある碁石海岸に臨む末崎町で「鮮魚シタボ」を営み、40年以上が経つ。あの大津波で自宅兼店舗は被災したが、現在は高台に移転し、出世で名高い熊野神社のそばに店を構える。愛犬フランは他界してしまったが、猟犬の「ポウ太」(9カ月)が昨年7月から家族の一員になり、楽しく過ごす。ポウ太はエネルギーにあふれ、30分から1時間をかけて近隣の山に散歩ならぬ、トレーニングを積みに勝弘さんと出かける。
昨年、店は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、得意先が店をたたむなど仕入れは減ってしまった。そうした中でも、村上さんが選ぶ海産物や、干物やイカの塩辛などの加工品を求め、外出自粛も手伝い遠方から注文が来る。最近では都内の店からも声がかかるなど、勝弘さんの目利きは多くの人に頼りにされている。「三陸の海の幸が食べられてうれしい」という喜びの声が励みになっているが、交流のある人たちが遠慮して店から足が遠のいてしまった現状を残念に思う。今は研修で以前訪れた大学サークルの学生やその卒業生たちとリモートで連絡を取り合うこともあるが、「やっぱりお店に来てもらいたい」と富士子さん。収束して、誰もが気兼ねなく、自由に行き来できるときが来るのを心待ちにしている。
「震災から10年のことを聞いても、あんまりいい言葉は出てこないよ」とうそぶく様子を見せるも、「立ち止まってしまったら生きていけないよね。だから節目だとかは思っていない」と強調する。これからの夢については開口一番、「オレ、もう70だよ。今が最高」と声を弾ませる。そしてすぐに「皆さんに生かされた。それに感謝」と希望を話せば、富士子さんは「震災にあったけど、多くの方と交流できたことに感謝」と、二人の言葉からは人々への感謝の思いがにじむ。
たとえ10年の月日が経とうとも、いつもと変わらず、自然体で。そんな肩ひじ張らない二人だから、一度会ったことのある人々はまた会いたくなる。
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