▼鹿沼公園、市立図書館を中心とする淵野辺駅南口周辺の再開発についての「市民検討会」が昨年12月に開催され、検討委員の今期最後の場でこれまでの一定のまとめが示された。2020年1月頃からコロナ禍で約10カ月間にわたり活動自粛を余儀なくされ昨年1月から書面形式で再開。6月から9月のオンライン開催を経て、ようやく10月から対面開催にこぎつけるなどまさに綱渡り、紆余曲折の進行だった。それでも12月までに議論を尽くし、まとめられた内容を次のメンバーへと引き継げたことは、委員としての責任を果たしたと言えるのではないか。
▼同駅南口をめぐる町づくりの動きが顕著になったのは17年頃。図書館、大野北公民館、青少年学習センターが築40年以上経過して老朽化していることや、施設機能に対する利用ニーズの多様化に応えきれず、不具合が生じていたことなどが発端だ。同じく鹿沼公園も整備から40年以上が経ち、遊具などの劣化が目立つなど安全管理上で懸念があった。そこで市は「次世代に淵野辺駅南口のまちを引き継ぐ」をテーマに、駅周辺公共施設を集約・複合化して公園内に新施設を建設する基本計画案を策定。市民に提示し、慎重に検討を進める構えだった。ところが同年12月の市民説明会で参加住民から反対意見が相次ぐと、翌18年5月に公表された計画案に関するパブリックコメントでは集まった914件のうち216件が異議を唱えるものだったため、計画案は大幅に修正。事業実施、施設の完成時期なども未定に。パブコメの結果が有識者を交えた市民検討会設立の機運になったと思われる。市は大野北地区の団体などに事業を説明し、プロセスを重ねたと考えていたかも知れないが、住民に浸透せず拙速との印象を与えた。
▼その後、有識者、公募で選ばれた市民による検討委員会を設立。検討を進めやすくするため、市は事業を実施する上での検討パターンを用意。歳入、歳出を含めた各パターンにかかる事業費の比較はもとより、複合施設に求める機能、立地などについて検討会のほか、市民参加型ワークショップ、市民アンケート調査などで意見を集めた。その上で、「現在地維持」「鹿沼公園中心」「図書館敷地中心」「公民館敷地中心」の4パターンを示し、各利点や課題を議論。そこで有識者の助言から公園と図書館パターンの折衷案が生まれ、結果的に折衷案の評価が高いことから最後の検討会で「鹿沼公園と図書館敷地を一体的に利用し、再整備を行う」が一定の方向性を出した。
▼本紙も18年にこの課題を検討委員や自治会関係者、有識者などの意見を連載で掲載した。そこでは合意形成の手法に関する問題点、自然を生かした開発、多世代交流で地域を活性させるアイデアなど多様な提言があった。そうした中、検討会の取材を重ねるうちにさまざまな立場の委員も市も、淵野辺駅南口の町を良くしたいという思いは同じだと感じた。それはコロナ下でも書面で、オンラインで少しずつ議論を前進させたことに表れている。これまでは実現の可能性を追求してきたが、次の段階として大事なのは、誰のためにこの町づくりを進めるのか、利用主体は誰なのかを明らかにすることではないか。利用主体を明文化し、そこに至る思いまで共有してほしい。そうすれば、事業を進める上での優先順位も具体化し、より現実的な判断につながるはず。現在は検討期限、事業開始時期などを設けずに議論を進めているが、そうしている間に老朽化は進み、時間に余裕はない。ただ、現状の行財政改構造革プランでは「複合化」案で維持されているのが事実。次期委員にはぜひ費用面、期限、そして誰が主役の再開発なのか踏み込んで議論を突き詰めてほしい。
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