市内美住町の美術エッセイスト、宮野力哉さん(78)は毎年、大阪市の堀川戎(えびす)神社が元日に頒布する宝船画の奉納を続けている。宮野さんの奉納は今年で17年目を迎えた。
「宝船」と呼ばれる絵は1月2日の夜に縁起の良い初夢を見るため、枕の下に敷く縁起物。絵には「長き夜の遠の眠りの皆目ざめ波乗り船の音の良きかな」という回文の歌が書き添えられることが多い。宝船頒布は室町時代に始まったとされ、戦後辺りからあまり見られなくなった風習だ。
堀川戎神社では1997年から宮野さんの奉納画を枚数限定で印刷、社頭で頒布している。「毎年絵柄が変わるのが珍しいみたいで、例年除夜の鐘が鳴るころから整理券を配って、元日の朝10時には無くなってしまうみたいです。だから僕も現物をあまり見たことがないんだよなあ」と宮野さん。
楽しさが伝われば
当初は切り絵でロゴデザイン的な作風だったが「根っからの凝り性なもんで、だんだんと複雑になってきていますね」。4年前からは孫たちの描いた絵をワンポイントで使った合作シリーズになっている。
今年の宝船は1798(寛政10)年に刊行された「摂津名所図会」にある一場面がモチーフになっている。天下の台所と呼ばれた大阪に物資を積んだ船が続々入港する賑やかな様子を反映させた。帆にはエビス様が描かれており、これは宮野さんの4番目の孫(小学4年)によるものだ。絵の周りに書かれた回文は初孫(高校2年)作で、今回も祖父と孫のコラボレーション作品となっている。
「毎年10月位からあれこれ考え始めるんですが、仕事の合間の制作作業が楽しいんですよ。まずは僕が楽しんでやっていることなんですが、その楽しさが皆さんに伝われば良いですね。毎年違うデザインで奉納するっていうライフワークなんで、生きている間は続けたいなあ」と宮野さん。まずは本人がエビス顔に、この心意気で宝船創作はまだまだ続いていきそうだ。
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