横浜市中区・寿町の人模様を描いた書籍『寿町のひとびと』が10月20日に発売された。ノンフィクション作家の山田清機さん(57)=茅ヶ崎市浜須賀在住=が足掛け6年の取材を通してまとめた力作。山田さんは寿町について「心の幅を広げる可能性を持った街」と振り返った。
有隣堂本店で上位に
寿町とは石川町駅から徒歩5分ほどに位置する中区の寿地区といわれる0・1平方キロメートルにも満たないエリア。そこに約120軒の簡易宿泊所が密集し6500人前後が暮らしている。
同作品では、簡易宿泊所で暮らす人々から、その支援者たちを丁寧な取材を通して14話にまとめて紹介している。朝日新聞出版から発売(1980円税込)。有隣堂伊勢佐木町本店では、発売から3週連続で販売部数が上位3位以内になるなど注目を集めている。
山田さんが寿町を訪れたのは2015年1月。別の取材の帰りに、編集者と興味本位で立ち寄ったのがきっかけだ。入った店ではノミ行為が行われ、出された酒は薄められたと思われる味わい。「日本三大ドヤ街」の一つとして知られた寿町に衝撃を受け、その後は寿町の住人を取材しようと足を運ぶようになった。
労働力の供給基地
1956年、進駐軍の接収が解除されたのちに「ドヤ街」が誕生した。山田さんは「ドヤとしての歴史は長くなく、この60年で街の性格が激変してきた」と語る。
日雇い労働者が住み、港湾荷役や高度経済成長期の大型公共工事などに労働力を提供してきた歴史がある。そのような社会的背景も作品には盛り込まれ、山田さんは「『非常識』なことが多い街だが、どんな人でも受容できる街。管理・効率化が進む現代で、この街が存在する意味は小さくない」と話した。
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