自由とロマンの木造帆船 水夫を魅了する「やまゆり」
ボッ、ボッ、ボボッ…。姿は見えずとも、腹に響く重厚でクラシカルなエンジン音だけで、木造帆船「やまゆり」がハーバーに戻ってきたことが分かる。
湘南の青空に映える白いマストを広げ、風を受けながら、ゆるやかに海へと滑り出す優雅な姿は、半世紀にわたって多くの人々を魅了してやまない。
「水に馴染むのは木造ならでは。しっとりとした乗り味で、乗った人は誰しもファンになってしまう」。こう誇らしげに語るのは「NPO法人帆船やまゆり保存会」の中村満夫理事長。「湘南の貴婦人」の愛称を持つ同船をこよなく愛し、長年、動態保存を支えてきた。
廃船の危機乗り越え
1964年の東京五輪ヨット競技開催に伴い、62年に神奈川県によって建造され、国内外の来賓用クルーザー、県警の警備艇として活躍した「やまゆり」。70年には江の島ヨットクラブが買い取り、42年にわたり維持・管理されてきた。
しかし、木造特有の船体の傷みや装備品の劣化があり、維持には年間300万円もの費用が掛かる。存続が厳しくなり、廃船の危機に。「廃船なんてけしからん。だったら自分が何とかする―」。クラブ会員だった中村さんが立ち上がり、93年に「やまゆり倶楽部」を設立、2013年はNPO法人化にこぎつけた。維持費は会員による年会費のほか、寄付に頼るが、会員番号は420を超える。「直したそばから腐っていくから大変。でも、修理や塗装、マスト磨きをするからこそ余計に愛着がわく」。
木造艇の持つしっとりとした質感や佇まいは、ほかに代え難く、人気は根強い。海上でも「おっ、やまゆりだ。まだ現役なのか」と感嘆の声が上がる。「ヨットは自由。信号や曲がり角も無く、どこへでも行ける」。男たちのロマンを乗せ、今日も優雅に海に出る。
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郡の中心から商業の街へ「長後」5月3日 |
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