午前11時、藤沢駅北口にある「ヨロシクまるだい」の食堂には、すでに10人以上が来店していた。おむすび、具だくさんの汁物、副菜3品がついて300円のランチを目当てに、高齢者や会社員、子連れの主婦が続々と訪れ、相席も珍しくない。夜には子ども食堂も。「月に何回も来てもらうには、この価格は譲れない」と、運営する認定NPO法人ぐるーぷ藤の鷲尾公子理事長(71)は話す。こだわりは、汁物を提供する会津塗の椀。安さだけが売りではない、おもてなしの心意気だ。
ぐるーぷ藤は、いつまでも誰もが自分らしく暮らせる街を目指し、1992年に市内の主婦5人が立ち上げた団体。鷲尾さんは義母の介護経験から、助け合い事業を始めた。家政婦ほど高くない価格で提供し、スタッフには賃金を払った。「ボランティアではなく、ビジネスにしなければ事業は定着しない」との思いからだ。2007年には、高齢者や障害者、子どもも集う福祉マンションを開設。昨年、サービス付き高齢者住宅を竣工した。
食堂のスタッフは有償ボランティアで、最高齢は82歳、障害者もいる。高齢者は働きぶりをみて元気をもらっているという。ミニデイサービスや生活相談窓口の利用者も含めると月間1500人弱が利用するが、300円ランチでは赤字だ。だが、鷲尾さんは言う。「ここは私たちが一番やりたかったところ。助け合いの街の象徴だから」
お茶だけを飲みに来る、生活困窮がうかがえる高齢者がいた。スタッフが地道に話しかけ、3年かけようやく心を開いた。「孤立する高齢者を地域につなぐ」、まるだいが目指す形だ。
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