鵠沼桜が岡「臼工房 柴田」
年末年始の餅つきには欠かせない臼やきね。神奈川県内で唯一、手彫りで製造する専門工房が市内鵠沼桜が岡にある。
「臼工房 柴田」は、店主の柴田芳久さん(54)がひとりで仕入れから製造、販売までを手掛けている。電気餅つき機の普及やパック餅の登場など、臼の需要は減少傾向にあるが、「臼は古くは縄文時代後期に脱穀として使われていたほど、日本人との関係が深い道具。昔は嫁入り道具としても使われたと聞く。その伝統や技術は途絶えてほしくない」
伝統や技術を受け継ぐ
藤沢で生まれ育った柴田さんは、都内で広告デザインの仕事に就くが、20代の終わりにバブルが崩壊。広告業界は不景気で、将来に不安を覚え、木工が好きだったことから、植木屋に転職した。
転機となったのは、雑誌で掲載されていた臼の手彫り職人の記事。面白そうだと、掲載されていた埼玉県の工房を訪ねた。「臼に興味を持つ人なんて珍しいから、その場で弟子入りになって、手彫りを学ぶように。簡単なきっかけだったけど楽しかった」と笑う。
2年ほど修行し、現在の場所に工房を開き独立。臼・きねの販売、修理、レンタルを行っている。他の木工品を扱わない専門工房は、全国的にも珍しいという。
原木選びから
臼はケヤキの原木選びから始まる。柴田さんは埼玉県にある原木市場で5・6mの原木を仕入れ、その原木を約1年かけ乾燥させて使う。適当な大きさに輪切りにし、彫り始めると2週間ほどで完成。外面から整形し、最後はカンナで丁寧に仕上げるため、水が浸透しづらく腐り難いのが手彫りの特徴だ。「刺身のようなもので、素材が一番大切。臼の品質は原木の良し悪しで決まる。そうやって、原木選びから製品まで、最初から最後までつくれるのが魅力」
修理を依頼する人には「祖母の嫁入り道具だった」「父親が買って大事にしていた」などと、2代3代にわたり受け継いでいるケースが多いという。「臼がいろいろな人の気持ちや思いをつないでいる。手助けができればうれしい」
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