「伝説」と呼ばれながら、今なおマイクの前に向かい続けるラジオDJがいる。コミュニティーFM「レディオ湘南」(83・1MHz)で23年間パーソナリティーを務めるざいつきげんさん(78)=本鵠沼在住=だ。自宅からスタートした、電波を使った”放送遊び”は足かけ36年。今や己のライフワークと呼べるものになった。
デビュー36周年 今も第一線
「江の島シーキャンドルの輝きが冬を伝えています」――。
日曜日の午後8時。今宵もお決まりのBGMに合わせて番組がスタートした。落ち着いた口調に渋い声色が、湘南の夜の雰囲気によく似合う。
自身の冠番組「元祖!ざいつきげんの音楽鍋」。前身の番組が開局の1996年に始まり、11年目からタイトルを一新して現在の形になった。自宅にある約4千枚のCDの中から60〜70年代の洋楽や邦楽を中心に、ジャズやクラシック、演歌まで10曲ほどを紹介する。
選曲はときには心温まるようにほっこりと、あるときはぴりりと刺激的に。番組作りはまさに鍋料理さながらで、「毎回ちゃんと”味つけ”を変えてるんだ。やっぱり鍋だからね。飽きさせないのがポイントだよ」と笑う。ミュージシャンの豆知識や、往年の流行などを交えた軽妙なトークも番組の売りだ。
◇ ◇ ◇
36年前、辻堂新町の自宅で開局したミニFM局「つっぱりファミリー放送局」が原点。当時若者の間でミニFMがブームになっていたこともあり、「家族で人とは違った遊びをしよう」と数十万円する機材を思い切って購入。音響も独学で一から学んだ。
放送範囲は自宅の半径1Kmほど。ポストに投函されたリクエストに応えるスタイルで、週2日の放送を続けた。出演するのは自身と妻、息子の3人だけだったが、放送を通じた地域ぐるみの輪は徐々に広がり、ファンもつくように。「電波が届かない地域からも人が来たり、バレンタインのときにはチョコレートが山ほど届いたんだから」
番組は13年続き、放送回数は実に千回。一風変わった趣味は度々マスコミにも取り上げられるようになった。
◇ ◇ ◇
大学を卒業後、広告代理店でコピーライターを務めたのがキャリアのスタート。独立後はイベントの企画演出やマーケティングを手掛けた。
近年では再就職を希望する中高齢者向けのセミナーで講師を務めたり、鵠沼公民館でラジオの公開放送スタイルの音楽講座も開いている。「人の前に立つと自然と自分を魅せる努力をする。服装一つにしても色気を忘れないようにしないとね」と茶目っ気たっぷりに話す。
◇ ◇ ◇
来年は傘寿。ギネス記録の最年長DJに挑戦するのが密かな目標だ。趣味の一環として始めたラジオのやりがいを問われるとこう返す。
「今も『放送遊び』ではあるけれど、公共の電波を使っているから、仕事より真面目にやらなきゃいけない。ラジオは自分の感性で自己表現できる場所なんだ」
まだまだ現役。これからも栄養価たっぷりの「音楽鍋」をリスナーに届けていくつもりだ。
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