「元気出していこう」。乾いた打球音の合間、グラウンドにひと際大きな声が響いた。声の主は、主将の圡橋海斗(3年)だ。
昨夏、強豪の一角として知られる翔陵を破り、16強まで進出した湘南。今夏はさらなる高みを目指し、辛い冬練にも耐えてきた矢先のコロナ禍による部活動休止だった。
「もしかしたら今年の神奈川大会はないかもしれない」。休止中、そのシナリオが何度も頭をよぎった。長引く自粛から、いっそ大学受験に頭を切り替えるべきか葛藤もあった。だが、「ここで今までやってきたことを途切れさせたら、悔いが残る」。仲間と過ごした2年間を心の支えに、およそ3カ月間、自主練を欠かさず最後の夏に備えてきた。
野球部きっての苦労人。毎日2時間近くかけて自宅のある三崎町(三浦市)から学校まで通う。遠征のときは夜明け前に家を出ることも珍しくないが、「自分で選んだことなので」と意に介さない。体格にも、野球の才能にもとりわけ恵まれたわけではない。それでも指揮官やチームメイトの信頼が厚いのは、「文武両道」を体現しながら努力を積み重ねてきた、その姿を誰もが認めているからだ。
今、何よりも仲間と野球ができる喜びをかみ締めている。部活動が再開し、「当たり前に野球ができる。それがこんなにもありがたいことだと、改めて気づかされた」。練習では誰よりも声を出し、チームを盛り立てる。
集大成となる大会まで1カ月。かける意気込みを問われると「全部を出し尽くしたい」と清々しい表情を浮かべた。「それが最後の舞台を用意してくれた人たちに報いることになると思う。先生、大会関係者、それに家族への感謝を、自分たちのプレーで示したい」
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