▼自分たちの身は、自分で守る――。辻堂地区で行われた避難施設運営訓練。参加者の表情は一様に真剣だった。主催したのは自治会や町内会の防災担当者から成る辻堂地区防災協議会。「自助」や「共助」の大切さが問われる昨今である。行政に頼り切るのではなく、住民自身が主体となり、地域防災と感染症対策の両立という課題に取り組んだ意義は大きい。
▼今回の訓練で浮き彫りになったひとつが、「分散避難」を実現させる難しさだ。コロナ禍を踏まえた場合、3密を防ぐため、避難所の定員は平常時の3分の1程度になる。実際、9月上旬に九州を襲った台風10号では、自治体が開設した5132カ所の避難所のうち、383カ所で収容人数を超える住民が集まったという。近隣の避難所の定員が何人で、実際の災害時に残り定員数をどう把握すればいいのか。日頃からの住民周知と、情報を共有する新たな仕組みが求められる。
▼一方、災害時に備えて避難施設をどう確保するかは「公助」を担う行政の役割だ。市は居住可能な場合は自宅に留まる「在宅避難」などを推奨するというが、少子高齢化で支援を必要とする人が増えている世情を鑑みれば限界があろう。災害も、感染症も待ってはくれない。民間事業者との連携など、早急な対策が必要だ。また、感染症に対応した簡易間仕切りなどの備蓄も現状は不十分で、急ピッチで充実させてもらいたい。
▼災害時の避難所運営では、避難者同士での役割分担が欠かせない。訓練の進行役が紹介した例によれば、避難者が”お客様”として扱われたことで行政への不満が高まり、挙句「税金を払っているのに」と怒号が飛び交う―。災害時の混乱を防ぐため、市民ひとり一人が自助への意識を改める必要があろう。藤沢には辻堂地区だけでなく、市内の防災活動をけん引してきた御所見地区防災組織連絡協議会の存在もある。こうした事例を参考に、コロナ禍での地域防災の在り方について今一度思いを馳せたい。
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