▲「静かで、子連れでも遊びやすい雰囲気」と話す、山梨から訪れた斎藤さんら2家族（７月26日／片瀬西浜）
江の島周辺の海水浴場で営業する事業者らは２０１３年に自主ルールを制定し、海の家の「クラブ形態営業」などを禁止して健全化を図っている。他自治体も新たな規制を打ち出す中、今夏の状況を追った。
自主ルール制定の背景には「近隣住民は夏の間、犬の散歩コースを変えて海を避ける」ともいわれた治安と風紀の悪化がある。ルールの徹底により海水浴場の来場客層は変化し、江の島海水浴場協同組合は「家族連れが増え、健全化できた」と手応えを感じている。
今夏にはルールが緩和され、組合が貸与または審査したスピーカーに限り、海の家でＢＧＭを流すことが認められた。同時に、西浜と東浜に計７基の防犯カメラを新たに設置。「自主ルール・自主警備で犯罪抑止」をスローガンに、治安と風紀、イメージ回復のため取り組みを続けている。
実質的な音楽「解禁」となったが、７月26日に東京から家族５人で西浜を訪れた男性は、「この程度の音楽なら気にならない。子どもも遊びやすいし、また来年も来たい」と話していた。一方、横浜から友人と５人で来た20代の男性は「静かすぎて地味なので、正直なところ『シケた海だな』と思った。次は他市の海水浴場に行こうと思う」と印象を述べた。
来場客、警察出動ともに減少
自主ルール制定後、市内海水浴場全体の来場客数は減少。約３７５万人（12年）から約２９８万人（13年）と約77万人減少し、14年も７月いっぱいの段階で約66万人と、前年を約19万人下回っている。同組合によれば、「減ったのは、クラブ化した海の家の若者客。割合として客層は良くなっている」。藤沢警察署の海水浴場（西浜・東浜・鵠沼）への７、８月中の出動件数を見ると、「クラブ化」ピーク時の12年から13年にかけて約１２７件減、今夏も７月31日時点で前年比13件減少と改善されている。
「売上は大幅減」
一方で、海の家の経営者らは苦しい状況に立たされている。アルコール類などの消費も多い若者客の減少は、海の家の収入への影響が大きく、ある事業者は「13年の売り上げは前年の１割程度まで落ち込み、今年も12年以前と比べれば半分以下」と話す。
とはいえ西浜「マルハチビーチハウス」の齋藤敏之マネージャーが「経営が厳しいからといって、かつての『クラブ化』状態に戻りたいとは思わない」と話すように、市内の海水浴場は地域経済と「健全化」の両立のため、継続的な努力と忍耐を続けていく方針だ。
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