それでも、野球が好きだから――。
今年で創立10周年を迎えた藤沢清流高校硬式野球部には、2人の女子選手がいる。うち1人が、3年生で最後の夏を迎える一塁手の近藤実夏(みなつ)だ。
高校硬式野球では、公式戦での女子選手の出場を認めていない。どんなに努力をしても、夢舞台に立てないことは分かっている。それでも、プレーヤーとしてグラウンドに立ちたかった。
藤沢翔陵で主将を務めた2つ上の兄に憧れ、中学から野球を始めた。体格が勝る男子に負けまいと、人一倍の練習量を重ね、高校でも野球部の門を叩いた。
男子と同じ練習メニューをこなし、自主練は誰よりも積んできた自負がある。遠投や走塁で肩を脱臼したことも度々だが、「もっと上手くなりたい」とめげることはなかった。そんなひた向きな姿は、今年から指揮をとる榎本正樹監督も評価している。「全体練習がない日でも、グラウンドに出て黙々とバットを振っている。打者としてなら男子にも引けを取らず、もし出場できるなら夏もメンバー入りしていた」
「自分が女子でなかったら、どこまでいけたかな」。心の隅でそう考えたこともある。だが、清流高校での野球生活に後悔はない。「ここで野球をやって来て、今の自分があるから」と表情は晴れやかだ。
近藤にとって部のチームメイトは切磋琢磨するライバルであり、苦楽をともにしたかけがえのない仲間。夏の県予選では、応援団長としてアルプススタンドからエールを送る。「グラウンドには一緒に練習してきた仲間が皆いる。声で背中を押せたら」
立つ場所は違っても、思いは白球を追いかける仲間と変わらない。最後の夏を一勝でも多く―。そのために全力を尽くすだけだ。
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