地元・辻堂への愛をリリックに込めて――。可愛らしい歌声と天真爛漫な見た目とは裏腹に元ホームレスという壮絶な経歴を持ち、注目を集めている新進気鋭のラッパーがいる。辻堂新町在住のなかむらみなみさん(25)。その活躍の裏には彼女の波乱万丈の道のりがあった。
目を引く髪色に、カラフルな服装。首元には”辻堂っ子”を意味する「辻堂諏訪睦」と書かれた木札が揺れる。9月の涼しい風が吹くこの日、辻堂海浜公園のタコの遊具の前で撮影を終えると「昔よく来てました」と笑顔を見せた。
2015年にヒップホップ・ユニット「TENG GANG STARR」を結成しデビュー。19年3月に惜しまれつつ活動を休止したが、同年にソロとして活動を開始。今年2月にはイギリス・ロンドンのプロデューサーとのコラボ楽曲を発表するなど国内外から注目を集めている。
昨年8月末に発表した初のソロシングル「Ride」は、「サマーソングかつラブソング」がコンセプト。辻堂での思い出や、辻堂から東京へ向かう心境などが歌詞に取り入れられている。中でも、サビ後に登場する「冷たいビールの前に不動湯」は地元民必聴。辻堂駅南口の知る人ぞ知る銭湯でさっぱりした後、ビールを飲むという「お決まりの流れ」を取り入れ、爽快感を表現した。
ラップに生きる人生経験
ラップを始めたのは18歳。複雑な家庭環境から逃げるように、東京へ出てホームレスになったことをきっかけに、仲間と一緒に音楽を始めた。最初は過激なパフォーマンスも多かったが、その姿が後にユニットを組むラッパー・kamuiさんの目に留まり、表現者としての道を歩み始めたという。「自分の思いや経験を言葉で伝えることは楽しかった」
辻堂で生まれ育ったなかむらさん。親戚の家を転々とすることもあったが、「地域の人たちが家族のような存在だった」と振り返る。その支えてくれた近所の町内会の人たちは神社の氏子の関係者が多く、小学校3年生の時から辻堂諏訪神社に足を運ぶように。毎年7月に行われる例大祭に向けて「生きる全てをお祭りに捧げた」というほど活動にのめり込んでいった。「初めてこの人たちに認められたいと思うようになった」。厳しい指導者も多かったが、周囲と切磋琢磨しながら、祭りを盛り上げた。
太鼓や篠笛、すり鉦(がね)など楽器に慣れ親しんだ経験は、現在の音楽活動にも役立っている。神輿を担ぐ足のステップや、日本の伝統歌謡「甚句」なども「七五調がラップと通じるものがある」といい、現在の作詞作曲の活動に生きている。「地元・辻堂に育ててもらったことに恥のないように。多くの人に聞いてほしい」と話した。
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