「藤沢市で一番高いところって知ってる?」。取材先で聞かれ、恥ずかしながら答えあぐねてしまった。編集室の回答、「江の島」は60m、「善行坂(立石)」は52m、「石名坂(本藤沢2丁目)」は37mでどれも不正解。調べると、村岡地区、渡内にある浄土宗二伝寺が最も高い73・5mであることが分かった。最高地点を訪ねると、とある人物の塚があった。
「丘(高い地点)が群れる」が由来とも言われる村岡。住宅街の中の坂を上がり切り、さらに石段を上ると緑眩しい木々の中に寺門を見つけた。
二伝寺は1505年、小田原北条家の北条氏時の発願で建立。氏時は、北条早雲が対三浦氏のために築城し東相模最大の拠点であった玉縄城の城主で、寺はちょうど玉縄城の尾根つづきの南東の角に位置する。寺前には旧鎌倉街道が通り、当時は砦としての役割を担ったという。
当間浩昭住職に歴史を解説しながら境内を案内してもらった。門を入り正面の本堂には伝・運慶作の聖観音を安置。その横には家康の家臣で江戸期に玉縄城を守護した松平正次の墓がある。
最も景観の良い墓所の裏手からは藤沢市の街並みの奥に富士山が望めるる。竹林を抜けさらに奥へ進むと、境内の最高地点、つまり藤沢市で最も高い場所へ辿り着いた。
木々が茂り、あたりの景観は見えないが、子どもの背丈程度の石造りの塚がある。平将門の叔父で、平安時代にこの地にあった村岡城に居を構えた平良文、別名「村岡五郎」の塚だという。
かつてはさまざまな戦いやドラマがあったであろう歴史の重要地点。今は穏やかに藤沢と鎌倉の街を見守っている。
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