女子美術大学(南区麻溝台)教授で、このほど『静穏の書: 白い街、リスボンへ』(彩流社)を上梓した 杉田 敦さん 大田区在住 57歳
創造に求められる大切なこと
〇…例えばオノ・ヨーコの『天井の絵』。これを創るためには絵を描く必要も、あるいは脚立を作る必要もない。創作に求められるのは「YES」の大切さに気が付くセンス。それを組み立てるのは、絵の技術ではない。このような芸術の理論と実践の必要性を訴え続ける。「芸術=絵」という考え方が浸透しているこの日本では、大学の教員に説明するのさえ難しいそうだ。
〇…函館生まれの岐阜育ち。高校の時から物理と数学が好きで、名古屋大学理学部物理学科へ進学。物理は「世界の仕組みがわかる」ので興味があったそう。また、「文章を書きたい」という欲求も強かった。尊敬するドイツ文学者、種村季弘(すえひろ)の著作は「全てに驚きがあった」。卒業後、画像解析の研究を経て、フリーの編集者へ。「30歳で本を出したい」との目標に向かい、現代思想関連の論文を書きためた。そして『メカノ』(青弓社)を発表。科学と芸術の両方を見つめた本がきっかけとなり、徐々にアートの道へ進んでいく。
〇…ポルトガル、なかでも首都のリスボンは、とても好きな場所で20年以上、毎年訪れている。「行くと『帰った』感じがする」。映画『白い町で』(1983年)からの影響が大きい。現地の文化に関する本を出すなどして、「叙勲していただいた」こともあるとか。新著は、そんなリスボンの写真集だ。
〇…「街が抱えるネガティブな要素は、そのときそこでは人々をつなぎとめる重要な役割を果たすことだろう」(さがみはら南区版2010年7月掲載、杉田敦『語りあう街へ』より)。「そこ」とは(当時相模大野の)再開発のフリンジ(へり)にある小さなコミュニティのような場所。今もよく南口の立ち飲み屋に足を運ぶ。ギャラリーを営む妻と二人暮らし。趣味はサッカーで、チーム名を「クース(古酒)」とするほどお酒好き。都内の角打ちや、朝から飲める店にも詳しい。
|
|
|
|
|
|
|
<PR>