作品展「記憶の痕跡」を7月30日まで相模原市民ギャラリーで開催する 菅沼 稔さん 青葉在住 64歳
表現の可能性に挑む
○…油彩画を集めた作品展「記憶の痕跡」には、これまで手掛けた20号から100号サイズの作品9点が並ぶ。「何も書いていないんです」と話すキャンバスには、物の形や額までもが排除され、透き通る色彩だけがどこまでも広がる。その色は自身の様々な記憶から手繰り寄せられたもの。「絵から形をとったらどうなるか自分なりにやってみた」
○…中学生の時、美術の授業で校内風景を写生した際、自分が描いた灰色の地面に先生が一筆塗った色鮮やかなオレンジに魅せられた。「色ってこんな使い方ができるんだ」と衝撃が走り、芸術の道へ。進学先の東京藝術大学では油絵を、続く同大学院では版画を専攻。その後、複数の大学や高校で教鞭を執る。新磯高校(南区/現・相模原青陵高校)では、学校の敷地内で火焔土器が発見されたのを機に、焼き物教室を担当することに。陶芸技術を習得し、市民への公開講座も受け持つなど、地元に馴染み深い。
○…アウトドアが好きで、教員時代には日本山岳会に入会した経験もある。最近では創作活動に追われる日々で山に触れる機会は減ったが、代わりに家庭菜園でトマトやきゅうりを育てて息抜きをする。活動への良き理解者であり自身の一番のファンである夫人とアトリエで過ごす時間も欠かせない。作品に対して鋭いコメントを寄せられることもあり、「よく見ていますよ、40年連れ添ってもらっているんで」と相好を崩す。
○…見る人の感性に解釈を委ねるため、作品にはあえてタイトルを付けず制作順の番号をふっている。「見方は十人十色。それを感じてもらうのが嬉しい」。鑑賞する人と絵画との空間を生み出すため、色彩での表現を探る日々だが、その先には、これまで訪れた場所で最も印象に残る南仏のル・トロネ修道院に自身の絵を飾るという壮大な夢が広がっている。「自分の絵をどこまで突き詰められるか。絵で勝負したい」。どこまでも表現の可能性に挑む。
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