新年の幕開けにあたり、本紙では鈴木恒夫藤沢市長に単独インタビューを行った。昨年は新型コロナウイルスの感染拡大に伴う諸課題に追われ、自治体としての対応力が問われた1年だった。今春には新体制に向けた組織改正や総合指針の改定が控える。今後の危機管理体制や重点施策、市政運営の姿勢などについて聞いた。(聞き手は本紙、佐藤弦也)
――まず昨年を振り返って。市内でも11月以降、第3波の余波で感染者が急増しています。
「県も対策を打ち出しているところですが、市としても特に力を入れたのが感染症による重症者への医療提供体制です。(第二種指定感染症指定医療機関に指定されている)市民病院では『ECMO(エクモ)』(人工心肺装置)や人工呼吸器など医療機器の増強を図っています。市民病院をはじめ、医療従事者の協力をいただきつつ、この局面を乗り切っていきたい」
――コロナ禍が市民生活や地域経済にも大きな打撃を与えました。
「市としては、ひとり親家庭などに対する臨時的な支援として、児童扶養手当の受給世帯に3万円を計2回と合わせて商品券や江の島セット券を支給したほか、学校が一斉休校した際には必要とする子どもに原則100円で軽食を提供、校庭開放や居場所事業など、きめ細かく取り組んできました。また緊急事態宣言下、休業要請に応じた飲食店などには、県の協力金に上乗せする形で最大50万円を交付。11月には、経済活性化のため『ふじさわ元気回復プレミアム商品券』を販売するなど、独自の支援策についても積極的に取り組んでいます」
――観光業についてもダメージが深刻です。
「コロナを境にインバウンド(訪日外国人客)需要がほぼ途絶え、取り巻く環境も様変わりしました。観光振興については現在、地元の魅力を再発見していただく『ステイローカル エンジョイローカル(地元にいながら地元を楽しむ)』をコンセプトに掲げています。観光に携わる方や関係者を交え、今後もマルチなパートナーシップにより、新しい生活様式に即した観光施策を推進していきたいと思います」
――今後のコロナ対策については。
「一つは危機管理対策。感染症の恐ろしさは身に染みて分かりましたので、感染症が急拡大した際に、いち早く対処できる体制を構築する必要があります。4月からは市役所の新体制がスタートしますが、感染症対策の総務機能を担う課を新たに設置するほか、市民病院にも関連する対策室を新設します。また今後、国からワクチン接種の方針も打ち出されるでしょう。そのとき市民の皆様が素早く接種できるよう、体制を整えておかなくてはいけません」
――コロナ禍で来年度市税が大幅に減収する見通しです。
「来年度予算については現在編成中ですが、この状況下で市民生活に関するものやコロナ対策など、予算を削れないものもあります。支出を精査することはもちろんですが、市税の見込みについてあらためて精査するとともに、国県からの補助金や地方債、財政調整基金なども活用してまいりたいと思います」
藤沢らしさ大切に前進
総合指針改定
――市政運営の方針を示す総合指針が4月から改定されます。
「2040年を見据えた基本方針と24年までの直近4年間に実施する施策を位置付けた重点方針からなるもので、現在案を作成し、パブリックコメント(市民意見公募)を実施しています。サブタイトルは『2040年に向けた持続可能なまちづくりへの転換』。時代の変化や現在のコロナ禍も踏まえつつ、今後取りまとめていきます」
――国連が提唱するSDGs(持続可能な開発目標)に通じますね。
「SDGsの視点は総合指針全体に関わってくるものです。新たな総合指針には3つのまちづくりコンセプトとして『サステナブル(持続可能な)』『インクルーシブ(誰一人取り残さない)』『スマート(最先端技術を活用した)』という考え方を取り入れたいと思っています」
――「デジタル市役所」の推進など形になってきたものもあります。
「1月からは県内初となるウェブ口座振替受付を開始するなど手続きのデジタル化を始めています。また組織改正では新たに『デジタル推進室』を設置します。デジタル市役所といっても親しみやすく、分かりやすさに心掛け、役所業務の効率化と市民の皆さんの利便性の向上というのが柱です」
――SDGsに関して、市長が日頃個人的に意識していることは。
「やはりSDGsのキーワードでもある『インクルーシブ』でしょうか。誰も取り残さないというのは目指すべき社会のあり方。地域の縁側事業やCSW(コミュニティソーシャルワーカー)の全13地区配置など、あらゆる施策に当てはまる考え方です」
東京五輪開催
――昨年延期になった東京五輪が今夏予定されています。期待感は。
「開催の可否は市が関与できることではありませんが、市としても最大限の準備をしていきます。江の島が競技会場となるセーリングはこれまで2度ワールドカップが行われ、外国人選手と地元の子どもたちが接する機会を持つこともできました。東京2020大会を契機にそうした機運も高まっていくでしょう。また、『シティキャストフジサワ』や『2020応援団藤沢ビッグウェーブ』の皆さんと一緒になって盛り上げていくことがまずは大事だと考えています。東京2020大会にまつわる人々の思いはスポーツの推進や更なるボランティア文化の醸成など、その後のまちづくりにも生きる。藤沢の市民力や地域力がますます高まる機会として期待しているところです」
――市内に拠点を置く神奈川フューチャードリームスがプロ野球BCリーグで参入初年度に優勝するなど、このところスポーツに関する話題が活況です。まちづくりにつなげる発想は。
「東京2020大会を契機に『スポーツ都市宣言』をしたいと考えています。スポーツで体を動かすことは市民の健康づくりにもつながりますし、地元からプロスポーツチームが育っていくのは市民にとってもうれしいことです。最近では高校生やジュニア世代で優秀な成績を残す選手も増えてきています。皆さんと一緒に応援していけたらと思います」
村岡新駅構想
――JR藤沢―大船駅間で設置の議論が進む村岡新駅構想について。今年度内にJR側から事業費が示される予定です。
「研究機関が集積する村岡地区は藤沢の6つの都市拠点の一つと位置付けられており、まちづくりに向けた機運も高まっているところです。条件面についてはこれまでも県や鎌倉市、JRと協議を行っていますが、事業費負担などを加味し、最終的に判断します」
――コロナ禍が続いていますが、今後どのような姿勢で市政運営に臨みますか。市民へのメッセージをお願いします。
「このような状況であればこそ、『藤沢らしさ』を大切にしたいと思います。藤沢は、まちへの愛着と誇りを持った方が多く、人材が豊かです。この難局も、市民、関係団体、医療・福祉従事者、事業者の皆様と一緒に、マルチなパートナーシップで、乗り越えていきたいと思います」
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