発達障害や知的障害のある若者が学校を卒業した後も生涯を通じて学び、余暇を楽しむことができる環境の整備をめざして市発達障害支援センターと相模女子大学が連携し、現在、「インクルーシブ・プログラム」の研究開発事業に取り組んでいる。その一環で、10月からはオンライン配信によるセミナーを開催。これまで交流機会の少なかった障害者が同世代の若者と友人関係を築くきっかけとなるよう、参加を呼びかけるとともに当事者の意見を反映させた多様な学びの場の拡充につなげていく考えだ。
「インクルーシブ」とはさまざまな世代・特性の人たちが共に過ごすことを意味する言葉で、市はプログラムの開発を通じて障害者が他者と交流し、興味関心を深められる環境・制度づくりをめざしてきた。その中で、障害がある高校生以上の人に対して同センターでは、これまでも相談・就労支援などを実施。一方で、障害者が就職した後新たに友人関係を築くことが難しく、余暇が充実しないために私生活や仕事に支障をきたすといった課題が浮き彫りになっていた。同センターの小林太郎さんは「発達障害のある方はコミュニケーションの苦手さで苦しむ人が多い中、センター内の支援だけでは新たなコミュニティに一歩踏み出すのは難しい」と指摘する。
同センターは地域での交流機会の拡充を目的に、2020年度から研究実績が豊富な相模女子大学と連携。同大学の持つノウハウと学習環境を生かし、障害の有無に関わらず参加できる学びの場として、講義が中心となる「セミナー」とグループワーク主体の「ゼミ」を企画・運営した。
加えて、21年度からは文部科学省から「学校卒業後における障害者の学びの支援に関する実践研究事業」を受託。同大学のゼミと連動し、自ら現地調査を行うフィールドワーク型の「リサーチ」を新たに開始した。今後はこの3つを柱とした「インクルーシブ・プログラム」を実践する。
同事業ではさらに、障害者と市民の交流の促進、共生社会の実現に向けた地域への啓発や大学の場を活用した生涯学習モデルの普及も期待される。小林さんは「『障害者のために』ではなく、『障害者とともに』過ごせる場を実現できたら」と話す。
セミナー機に交流促進
プログラムの開発に当たっては3つの学びの場が相互に関わりあうことを想定している。具体的には、全4回のセミナーを実施。「ゼミ」や「リサーチ」につながる入口として位置付け、テーマもこれまで交流機会が少なかった人でも参加しやすいように設定した。第1回は10月2日(土)、「学んでみよう!心理学」と題して同大学の森平直子教授が心理学と音楽をテーマに講義を行う。時間は午後2時から1時間で、中学生以上であれば誰でも参加可能。ビデオ会議ツール「zoom」を使用してオンラインで配信する。
講義後には若者世代を中心に興味・関心を共有する「なんでも自慢タイム」を企画。ゼミに参加している障害者や学生がサポート役を担い、交流や仲間づくりを促進する。第2回は11月開催する予定。
プログラムを統括する同大学の日戸由刈教授は「痛ましい事件が起こった相模原市が取り組むことに意義があると感じる。障害のある当事者が率直に意見交換し、安心して話せる体験をして欲しい」と期待を寄せた。
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