相模原の司法を考える【14】 連載 刑事裁判傍聴会のススメ 寄稿 加藤哲弁護士
このシリーズコラムでは、相模原の司法の現状と課題について、市にゆかりのある弁護士が解説する。加藤哲氏が担当。
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神奈川県弁護士会相模原支部では近年、地域における法教育活動に注力しています。その活動の1つとして、令和2年より相模原・座間地域の中高生を対象に地元の横浜地方裁判所相模原支部における刑事裁判傍聴会を企画しています。
具体的には、裁判傍聴の前に弁護士による刑事手続などに関する事前講義を行い、その日に開廷されている実際の刑事裁判を傍聴してもらいます。その後、傍聴した裁判などに関し弁護士から事後解説し、参加した生徒たちとの間で司法に関するさまざまな話題について双方向にフリートークするという企画です。
参加した生徒の皆さんは裁判傍聴前の事前講義では受け身であることが多いものの、実際に裁判を傍聴した後には堰を切ったように目にした裁判のことについてはもちろん、それ以外の司法制度や身近な法律問題などについても驚くほどたくさんの疑問質問を積極的に投げかけてくれます。こうした様子に、裁判傍聴を通じて参加者に大きな意識の変化があったことを感じさせられます。
もともと多くの方々にとって裁判や司法というものは縁遠く、ゆえに抽象的にしかイメージできないものだろうと思います。しかし、裁判傍聴の体験を通じて目の前に実在する人やその人生というリアリティに触れることで法律や裁判が自分と無関係なものではないと感じられるようになるのではないかと思います。
法改正によって18歳で成年となり選挙権を有するとともに、裁判員裁判に参加し得ることにもなりました。したがって、遅くとも18歳を迎えるまでに法律のことや裁判を含む司法制度のことを知り、法的な思考を養うことのできる実践的な機会が与えられる必要があります。私たちは地域の法曹として、ご紹介した刑事裁判傍聴会などの法教育活動を通じ、地域の子どもたちに機会を提供したいと考えています。
同時に、子どもたちには自分たちの地元の裁判所を見てもらいたいと考えています。なぜなら、地元の裁判所こそ自らを含む地域社会の構成員に対し最も身近に司法サービスを提供する機関だからです。憲法は裁判の公開を保障していますが、これは裁判の公正を確保するためであるとされています。刑事裁判傍聴会のもう1つの目的として、自分と最も関係の深い裁判所が公正な裁判を行っているか、紛争解決機関として機能しているか、他の裁判所に劣らぬ司法サービスを提供しているかなどを自分の目でチェックすること、その経験を通じて子どもたちが地域の司法に関心を持つ機会となることを目指しています。
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