性的少数者のパートナーを公的に認める「相模原市パートナーシップ宣誓制度」。相模原市は2019年4月に制度を開始し、導入から3年で36件のカップルが宣誓を行っている(3月31日時点)。本紙では、宣誓を行った南区東林間在住の丸山悠輝さん(30)と安田圭吾さん(31)に制度に対する思いを聞いた。
丸山さんと安田さんが出会ったのは、新型コロナウイルス感染拡大が騒がれ、1回目の緊急事態宣言があけた2020年6月。2人はほどなく、職場に近い新宿区内で同居をはじめ、約1年半後の22年1月に結婚式を挙げた。
その後、「2人の勤務地である新宿近辺から便が良く、静かな環境で暮らしたい」と引っ越し先を探す中、同年10月に東林間に引っ越した。「第三の家族である愛犬も増えた。通勤にも便利で、自然が多く、周りの人も親切で過ごしやすい」と、相模原での生活の感想を話す2人。相模原への転居を決めたのは、同制度があったことも影響したという。
転居から約3カ月後の今年1月28日、2人は制度を利用し、パートナーシップ宣誓を行った。この制度は、婚姻のような法的な効力はないが、単身者向け住宅以外の入居の場合、これまで「夫婦(婚約者、内縁関係を含む)、家族であること」が条件とされていた市営住宅の入居者資格が認められるほか、保険の受け取りや携帯電話の家族向け割引サービス、家族だけに認められていた入院手続きや面会の許可なども可能になるというものだ。
2人は宣誓後、こうした具体的なメリットはあまり感じていないというが、「公的な機関に2人のことが認められて安心感があった」など、気持ちの変化があったと振り返る。安田さんは「婚姻届けを出すのに近い感覚」と話す。
一方で同制度では、パートナーの扶養に入れない、相続ができないなど、正式な婚姻関係とは異なる点も多い。こうした部分を踏まえて安田さんは「普通の婚姻と同じようになれば、もう少し安心して生活できる」と社会に要望する。
制度は全国に拡大
同様のパートナーシップ制度は、2015年に東京都渋谷区で条例として制定され、その後全国に拡大している。23年1月10日現在で全国で255自治体が制度として導入し、22年12月31日時点で全国4186組が交付を受けている(渋谷区・虹色ダイバーシティ全国パートナーシップ制度共同調査)。
同制度は宣誓後、制度がない地域に転入・転出した場合、宣誓が無効になったり、導入自治体間の移動でもあっても、新たに手続きをする必要があるなど不便な面もあった。相模原市は、こうした当事者の負担を軽減するため、19年12月に川崎市と、23年2月20日に横浜市と「都市間連携に関する協定」を締結。川崎市との間で1件の事例もでている。丸山さんは協定について「選択肢が増えるということなのでうれしい」と喜ぶ。
市人権・男女共同参画課の担当者は、「制度を利用している方が、転入・転出する場合に生じる負担の軽減を図るため、都市間連携に関する協定を締結した。本市は引き続き、性的マイノリティの方の自分らしい生き方を後押しするとともに、性の多様性に関する社会的な理解の促進を図っていく」と話した。
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