相模原の司法を考える【12】 連載 「相模原で労働審判受けられないの?」 寄稿 藤田寛之弁護士
このシリーズコラムでは、相模原の司法の現状と課題について、市にゆかりのある弁護士が解説する。藤田寛之氏が担当。
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タイトルからいきなり疑問形で恐縮ですが、労働審判という手続をご存じの方から、こんな質問を受けることがあります。さて、皆さまは、労働審判をご存知でしょうか?
皆さまも報道などで裁判については長くかかるというイメージをお持ちでしょうが、(残念ながら)そのイメージは間違っていません。昭和の時代に比べれば、制度改正によって裁判の迅速化は図られていますが、それでも一般の方の感覚からすると、今でも裁判は時間がかかります。少し複雑な事件になると1年を超えることも珍しくありません。
裁判に時間がかかれば、お金がない当事者は困窮してしまいますし、裁判中に当事者が亡くなってしまう場合もあります。また、裁判沙汰になっていること自体が、当事者の方には大きなストレスですよね。もめ事は、早いうちに解決するに越したことはないのです。
そこで、労働事件(解雇や未払残業代請求事件など)にいては、労働審判という、普通の裁判より早く(3回以内)簡単に解決する制度が設けられ、2006年4月から運用が開始されています。労働者側にも使用者側にも使い勝手の良い制度として、現在、全国で年間3000件以上が用されています。なお、労働審判に際しては、話し合いが行われるために、使用者・労働者側の双方共に、当事者や担当者が出頭することが望ましいものとされています。
このように労働審判は非常に使い勝手の良い制度なのですが、実は、この労働審判は、神奈川県内では関内にある横浜地方裁判所でしか行われていません。つまり、小田原や横須賀、そして相模原の市民が労働審判を申し立てようとしても、関内の裁判所に申し立てをしなければいけないのです。そして、前述のとおり、当事者や担当者は関内で開催される労働審判の期日に出頭しなければいけません。
相模原市内から関内に出頭する場合、公共交通機関を利用すると、市内のうち比較的アクセスしやすい場所からでも片道1時間はかかります。ましてや、山間部など交通の便があまり良くない場所からは、片道で2時間以上を要する場合もあります。これでは申し立てを躊躇してしまい、相模原市民にとっては、労働審判制度は「絵に描いた餅」となりかねません。制度ができて15年を経過しているのに、未だに85万人(相模原市と座間市の人口合計)が利用できないという、裁判所の対応の遅さが目立つ結果となってしまっているのです。
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