高山松太郎市長は、学力向上と円滑な中学校生活への適応を図るため、小学校高学年を対象に教科担当制授業を導入すると、4月の会見で発表した。今年度は成瀬小がモデル校に指定され、同校の5・6年生196人が成瀬中の美術教員から図工の授業を受けている。この取り組みは来年3月末まで行われる予定で、その後は1年間の教育効果を検証したうえで、本格的な導入を検討する。
「小学生の子どもたちはみんな素直で好奇心も旺盛。授業の理解も良い」―。成瀬小で授業を行っている小田谷攝子教諭はこの1カ月を笑顔で振り返る。
小田谷教諭は現在、成瀬中で美術科を担当しながら、成瀬小では5・6年生の6クラスで図画工作を指導。授業数は週に9時間だ。既存のカリキュラムに沿って授業を進めているが、児童の様子を見ながら指導内容も見直しているという。「中学校に進んだ後、スムーズに技能教科に馴染んでもらえるよう、子どもたちには学ぶ楽しさを伝えていきたい」と意気込んでいる。
教科担当制授業は、クラス担任が全教科を教える小学校で、教科ごとに別の教員が指導にあたるもの。市教育委員会によると、県内では横浜市、川崎市、厚木市で導入されている。
これまで伊勢原市では、学級担任間の交換授業やキャリア10年目の中学教員による小学校への出張授業などが行われてきたが、通年で中学教員が教科指導するのは珍しい。成瀬小がモデル校に選ばれた理由について、市教育委員会の高橋正彦指導室長は「小学校のニーズなどを総合的に考慮した」と説明する。
小田谷教諭が成瀬小で授業を受け持つことに伴い、成瀬中には4月から美術を指導する非常勤講師が1人配置されている。
「教員にもメリット」
市教委によると、教科担当制授業を導入する主な目的は2つ。1つ目は小学校卒業後に中学校の生活へスムーズに移行できず、不登校などに陥ってしまう、いわゆる「中1ギャップ」への対応。2つ目は教員の指導力向上だ。新学習指導要領の実施により学習内容が高度化したため、各教科でこれまで以上に教員の手腕と専門性が問われているのだという。
「小学校の先生は基本的に全科目を指導する。その結果、先生が苦手とする教科も受け持たなければならないケースも起こる」。こう話すのは成瀬中の高橋健一教頭。高橋教頭は小学校の教員が中学校の教員の授業を見学でき、小中の垣根を越え意見交換もできるこの取り組みについて「子どもだけでなく、先生にとっても意義がある」と話す。
また、成瀬小と成瀬中が同一学区であることから高橋教頭は「小学校で習った先生に中学でも会えるというのは、中1ギャップを防止する要因になるのでは」と期待を寄せる。
市では1年間の成果を分析したうえで次年度以降の対応を決める方針。小田谷教諭は「子どもたちを良い形で中学校につなげられるよう、苦手意識を植え付けない授業を心がけたい」と話している。
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