藤沢市と鎌倉市にまたがるライフサイエンス(生命科学)関連の研究開発拠点「湘南ヘルスイノベーションパーク」(湘南アイパーク)=写真=が今春、開所から5周年を迎える。製薬や創薬を中心とする入居企業・団体は100を超え、開設時の20社から大きく拡大した。次世代医療の誘致に注力するなど研究開発拠点として進化を続ける同パークの現在地と展望を、藤本利夫ジェネラルマネジャー(54)に聞いた。
――企業や団体が組織や分野の枠を超えて新たな産業や技術革新に挑む「オープンイノベーション」の拠点形成に取り組んでいます。
「開所以来、重視してきたのは施設の中立性です。(施設前身の)武田薬品工業は強力なアンカーテナントではありますが、多様な関係を築くことに注力してきました。その結果、大手製薬企業をはじめ、別分野の企業も続々と拠点を集約してくださった。現在は複数のアンカーがあり、それぞれに関連する研究がひもづいている。小型ベンチャーやバイオテク領域も拡大しており、アイパークの『エコシステム』形成に貢献してくださっています」
――現在、パートナーシップを含む入居関連企業は150を超え、就業数は約2400人にのぼります。躍進の背景は。
「一つはオープンイノベーションに対するニーズの高まり。会社の経営陣も現場の研究者たちも、自分たちの視野を超えたつながりを持って研究の幅を広げられないかと苦心している。それに対し、我々は色々な方が安心して集まることができる環境を整えてきました。もう一つは、一線の研究者が来たいと思える場所にするため、最先端の研究やホットトピックスなどの発信にも力を注いできました」
――入居する企業団体間の連携と成果は。
「新しい連携は昨年度1700件以上、新規特許申請数は約150件、新規法人設立は6社にのぼります。特に目覚ましいのが企業間の連携で、当初は数十件だったものが一昨年は900件以上で、指数関数的に増えています。分野も製薬や創薬に限らず、動物細胞を培養して大量生産を目指す『バイオ肉』の研究など多岐にわたります」
――19年には県、藤沢、鎌倉両市、湘南鎌倉総合病院の間で覚書を締結するなど、地域連携にも取り組んでいます。
「提携を結ぶだけでなく、具体的なプロジェクトを進めてきました。一例は、医療と次世代の移動システムを融合して地域医療の質を高める『ヘルスケアMaaS(マース)』。昨年11月には住民の方を交えた実証実験を2年連続で実施しました」
――32年頃、近隣地にJR新駅の開業が見込まれており、健康医療をテーマにしたまちづくり構想が進んでいます。
「今回のパンデミックで我々が学んだのは、ヘルスケアの重要性です。イノベーションが進んでいないとワクチンや医薬品も海外頼みで遅れる。それが日本の現状です。ここには世界でも最大級の研究拠点であるアイパークがあり、国内最大級の医療の臨床拠点である湘南鎌倉総合病院があり、その2つが隣接している。ヘルスイノベーションがここで起きて、地域住民が利益を享受し、世界に届けていく。そんな体制が構築できれば世界にとって素晴らしいことです」
――今後の展望は。
「おかげさまで施設も手狭になってきており、企業を戦略的に誘致する段階に来ています。具体的には、次世代医療や次世代技術を持つ企業団体を見据えて改装を進めており、今後もさらなるエコシステムの形成に取り組んでいきます」
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