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砂張風鈴 恍惚の響き追求 二宮町の上島さん 小田原で製造

文化

公開:2016年9月2日

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研究所の事務所に飾られた砂張風鈴。独特の音色が室内に響く
研究所の事務所に飾られた砂張風鈴。独特の音色が室内に響く

 「チーン、チリン」。残暑厳しい9月の風に揺れ、風鈴の涼やかな音色が響く。

 足を運んだのは、二宮町山西の上島国澄さん(71)が10年ほど前に設立した「NPO法人小田原鋳物研究所」(小田原市)。砂張(さはり)と呼ばれる銅と錫の合金を用いた鋳物風鈴や仏鈴、持鈴などを製造しており、相模国の鋳物文化を紐解きながら「癒しの音」を追い求めている。

 砂張は古くから鳴り物の材料として使われ、錫の含有量によって熱処理後の硬さが変わるという。錫が多く含まれるほど高音が澄む一方、含有量が29%に近付くと割れてしまう。銅と錫の割合は、コンマ数%単位で調整していく。

 上島さんの研究では、砂張風鈴は異なる周波数の音が同時に鳴り、楽器に見られる倍音のような成分を含むことが分かった。鋳鉄や真ちゅうの風鈴よりも音の余韻が長く、「砂張ならではの響きが聞く人の癒しにつながる」という。

 工房では、職人が鋳型を用いて砂型を製作し、約1300度に熱した砂張材の融液を鋳込んでいく。鋳込みの仕方や冷却時間など、工程の一つ一つが音に影響を与えるデリケートな作業だ。「まだまだ改善の余地は限りない。研究に、これで良いなんてことはありませんから」(上島さん)

ものづくりの魅力多世代に広めたい

 上島さんは工業高校の教員時代、授業に取り入れる目的で鋳造を始めた。出前授業として、金属を溶かして鋳物を作る教室や教員向けの講座も行ってきた。「ものづくりの楽しさを伝えることは、研究所の大切な目的」といい、今も研究所主催で風鈴作りの体験希望者を受け入れ、親子向けの教室も開く。

 日本の伝統である風鈴の魅力を、世界中の人々に伝えたいという目標もある。上島さんは、センサーで人の動きを感知して扇風機を回し、風鈴を揺らす装置を開発中といい、2020年の東京五輪に向けてホテルなどに売り込みを進める。「日本の発展はものづくりが支えてきた。訪日外国人を、風鈴の音色でおもてなしができたら素晴らしいと思いませんか」と期待に胸を膨らませている。

 問い合わせは同研究所【電話】0465・42・1937。

代表の上島さん(左)と、錫の含有量が異なる風鈴の展示(右上)製造に欠かせない鋳型は上島さんが設計した(右下)
代表の上島さん(左)と、錫の含有量が異なる風鈴の展示(右上)製造に欠かせない鋳型は上島さんが設計した(右下)
工房には溶解炉や電気炉が並ぶ
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