城ヶ島にある県水産技術センターでは、磯焼けの原因となるムラサキウニにキャベツを与えて養殖し、ご当地食材として特産化をめざした全国初の取り組みが進められている。これまでの研究で、実入りの増加や味の向上が確認されるなど顕著な成果が出ていることから、農水産業が抱える課題の解決に地域から期待が寄せられている。
海藻を根こそぎ食べ尽くす厄介者と、出荷に適さず廃棄される野菜残渣(ざんさ)。2つを掛け合わせると美味しい海の幸に大変身―。
県水産技術センターのある城ヶ島の西側では、2008年頃からカジメなどの海藻が消失する食害「磯焼け」が発生。ワカメやヒジキ、天草のほか、藻場で成長するアワビやサザエが特産として知られる城ヶ島では、漁業に影響を与える深刻な問題だった。
アイゴなど植食性魚類と並んでその一因とされたのが、岩礁の海藻を好んで食べるムラサキウニだ。一般的に食用として流通するバフンウニと比べ、天然の状態では可食部の実(生殖巣)が少ないことから、食べる人はほとんどおらず駆除の対象。海水温の変化などで生息環境が整い、増殖と駆除のいたちごっこだったという。
一方、畑ではキャベツやダイコンなど季節ごとに野菜を生産。その際、規格外野菜や取り除いた葉や茎が大量に発生し、処分や活用に頭を悩ませる農家も多かった。
旨みと実入りアップ
そこでヒントになったのは雑食性であるウニの特性だった。同センター主任研究員の臼井一茂さんは「野菜残渣をムラサキウニに与え、飼育できないか」と考え、実験を開始。キャベツ1玉を80個のウニが3日で食べきっただけでなく、生殖巣も増加する驚きの結果となった。昨年度の実験では、体重の2〜3%だった実が、約2カ月で平均12〜13%、最大で17%にまで増やすことに成功。独特の苦みを抑え、甘みと旨み成分を多く含んでいることが分かった。
ご当地食材に期待の声
先月28日には漁業・農業関係者や行政担当者などを招いた試食会が京急油壺マリンパークで開かれ、生まれ変わった海の幸を味わった。「甘みが強く、これがあのムラサキウニなのか」。参加者からは驚きの声があがったほか、飲食店や卸売業者の評判も上々。「品質・味はとてもいい。安定的な供給体制が整えば、ぜひ扱ってみたい食材」と太鼓判を押していた。今後の展望について臼井さんは「まずは地産地消。たとえば三浦に来なければ食べられないウニとして商品化させ、観光産業にも結び付けていきたい」と意欲を述べた。
この日は地域連携による取り組みも併せて紹介。マリンパークと県立海洋科学高校の3者が協力し、高密度状態での飼育方法、野菜の種類や餌料の与え方、展示・広報活動、アカウニでの飼育試験などを産官学連携で進めていくことが説明された。
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